cover

「勝手にあの人紹介」被害者の会・牛尾 剛

今日は皆さんに、書籍や雑誌に記事を書けるようになるための方法を共有していきたい。
実際のところ、これはとても簡単な事だ。現在の実力や実績、才能など何にも必要ない。なにせ書籍や雑誌を書くために必要な免許など必要ないのだから。たった一つのことをするだけでいい。

ある男と契約をして魂を売るだけでよい。とても簡単だろう。

皆さんもご存知だろう。書籍や雑誌などは、それを出版していい物かの検討からスタートする。企画を出したのち、出版社でこの書籍や雑誌を掲載していい物かの検討を行い、収支の予測を立て、慎重なプロセスを踏んだ上で出版される。しかし、世の中このようなルートをすり抜ける方法はあるものだ。

私が彼に会ったのはまだ大阪にいた頃だった。私はとあるアジャイル系の講演で冗談で「Alistair Fowler Mc剛」というキャラクターをつくって講演をした。アジャイルに傾倒した原理主義者でウォータフォールのことをこき下ろす冗談キャラだ。しゃべり方は、ほぼデーモン小暮のようだ。
私はそういうお笑い担当的な役割だったので、そのキャラを全うして会場を地獄に落とした。もちろん冗談だ。何しろ講演資料や、イベント告知では、会社向けの真面目な内容にしておいた。講演は楽しんでもらいたかったが、会社にはまずいと思ったからだ。

そんなアホな講演をしたので、もちろん健全な出版社の人は誰も近づいてこなかったが、その男は違った。
「はははー。面白かったです。今度Eclipseの雑誌があるのですが書いてくれませんか?」
私の頭には、はてなマークが灯った。「わしの講演はアジャイルやからEclipseとちゃうし、なんであんなアホな講演で……」
私は彼に尋ねた。「あの、Eclipseの雑誌ですよね?アジャイルのことやったら書けますけど」
「そんなの気にしなくて結構ですよ〜」
私は答えた「わかりました。出来るだけEclipseに絡めて書いてみます。ちゃんとした出版社ですからまともな感じで書きますね」
男は答えた。「いやいや。今日の感じで書いて欲しいんです。Alistair Flower Mc剛として」
私は意味が分からなかったが「テ、テロみたいになっていいんですか?」
「テロがいいんです。」

私は半信半疑だったが、もちろん死ぬほど編集されて掲載されると思っていたので、とりあえずそのままのノリでむっちゃアホな記事を書いて彼に渡すと、ほぼ内容は編集されることなく、由緒ある『Eclipseパーフェクトマニュアル』に一つだけ、著者名「Alistair Fowler Mc剛」のアホ臭い記事が掲載されたのだ。

彼はその後も私の「アジャイル王子」というくそアホな格好をして講演しているのを、由緒ある雑誌に勝手に写真付きで掲載したり、『EM Zero』というフリーペーパーも思いつきだけで、てつ。というおっさんを表紙にした『EM てつ。』という雑誌に変えてしまったり、もはや、まともな社会人の所業とは思えない行動を繰り返した。
ふと気がついたら彼が忍び寄ってきて、どんなアホなアイデアに対しても「いいですね〜。それ記事にしましょう」と言ってくるのだ。実績でも実力でもない。皆さんもわかっただろう。単に彼に近づいて魂を売るだけで、どんなアホなことでも記事にすることができるだろう。

私は気付かない間に彼に魂を売った。いや勝手に売らされていたのだ。Robert Johnsonのように。
彼は悪魔に魂を売って神懸かり的なギターの腕前を手に入れた。そのかわりに、ベッドでヘルハウンドドッグに追いかけられる夢に苦しみ、若くして殺害されてしまった。
私は、彼に魂を売らされたおかげで、由緒ある雑誌に記事を書くことができた。そのかわり私のアホな写真は世間に公開され、著者名はAlistair Fowler Mc剛というアホな名前に変わり、そして、記事を要求されたときは、夜間と土日をブチつぶしても締め切りに追われてしまう日々を送ることになったのだ。
多分私も過労で間もなく死んでしまうだろう。

死ぬ前にひとこと、言っておこう。
もし、あなたが雑誌や書籍に記事を書きたくて有名になりたければ、彼に会うとよい。そして、魂を売ればよい。

彼の名前は野口という。どんなアホなアイデアでも悪魔の微笑みと共に記事にしてくれることだろう。君は名声と引き換えに、魂を彼に渡すだけでいいのだ。

まぁ、私の場合は知らん間に売られていたのだが。

noguta_証人喚問す3


「勝手にあの人紹介」被害者の会とは?

Manaslink腹黒編集長野口隆史による身勝手連載「勝手にあの人紹介」に勝手に紹介された方たちが、立ち上がり結成しました。
勝手にあの人紹介被害者の会

これまでの被害の模様

腹黒い被害の全容