■今回のメインディッシュ

12種類の言語をしゃべらなければならない

投手とは?

この言葉は、2002年にアスレチックスの投手コーチを務め、先発トリオ「ビッグ3」を含む最強投手陣をまとめたリック・ピーターソン氏の口癖です。

本題に入る前に『マネー・ボール』から、投手について語っている一節を紹介します。

投手は高性能スポーツカー、または、競走馬である

  • 生まれつきの才能がモノを言う。
  • ボールの速さ、変化球の鋭さなど、持って生まれた資質が大きい。

作家と同じように、望む結果のために 全体の流れを組み立て、あらゆる工夫を凝らす

  • アウトを取るために、流れ(ボールの種類、コース、投げる順番)を組み立てる。
  • あらゆる工夫(直球と変化球を混ぜる、間をとる、牽制球、など)を凝らす。

テクニックやプロセスよりも、結果の優劣で評価される

  • どのようにアウトを取ったかは関係ない。
  • 結果(アウトの数、勝利数、投球回数、など)で評価される。

将来を見極めるのが難しい

  • 打たれてばかりの投手が、変化球を覚えて一躍エースになったり、好調だったエースが、急な故障でダメになったり。

投手とはなんでしょうか?
この『マネー・ボール』の一節から分かるように、投手とは、能力が重要であり、創造的なポジションといえます。スポーツカー、競走馬、作家への例えは、実に的を射ています。

投手にはさまざまなタイプがある

3人の投手を例に挙げます。

身体能力で抑える投手(ジャスティン・バーランダー)、創造性で困惑させる投手(武田 勝)、両方をバランスよく使う投手(ダルビッシュ 有)。このように、投手はさまざまなタイプに分類できます。

タイプが違うのですから、必要なアドバイスも違うのは当然です。なにより人種も出身も育った環境も価値観も違うのですから、彼らに響く言葉も伝わりやすい表現も違ってきます。

12人の投手がいれば、12種類の言語をしゃべらなければいけない」という言葉は、話す内容は同じでも、相手に合わせた言い方・言葉を使うべきというピーターソン投手コーチのこだわりであり、信念なのだと思います。

人の数だけ言語が存在する

これが野球ではなく、仕事だったら?

野球と同じように「人の数だけ言語が存在する」と私は考えています。12人なら12種類、100人なら100種類の言語が存在します。

私たちの職場で使われる言語は、大抵は一種類(日本語)。多くてもせいぜい2〜3種類(日本語、英語、中国語、韓国語などのうち2〜3種類)です。
ただし、これは各国語に分類した場合の話です。同じ国の言語であっても「表現方法」という観点では、人の数だけ言語が存在すると考えています。

アウトの取り方もアドバイスも三者三様

野球の話に戻しましょう。

例えば、投手がアウトを取る(打者を取る)場合、ジャスティン・バーランダー武田 勝ダルビッシュ 有の3選手は、それぞれ方法が違います。もしも、この3人の選手をピーターソン投手コーチが見ていたら、三者三様のアドバイスをするでしょう。

  • 「打者は豪速球が得意だから、たまには変化球で勝負したらどうだ?」
  • 「今日はカーブのコントロールがよくないから、他のボールで勝負しよう」
  • 「四球になっても気にするな、アウトコースぎりぎりを突こう」

相手の打者・試合の状況・本人の調子などを考慮して、それぞれに合ったアドバイスをするんじゃないかな。あくまでも私の想像であり仮説ですが、的外れではないと思います。

投手の起用はコーチング

カンの良い方はお気づきでしょうが、これはコーチングです。

私たちの仕事でも、プログラムの書き方、プレゼンのやり方、営業アポのとり方は、研修を受けたり、本を読んだり、練習することで学べますが、それだけでは不十分です。プロとして活躍するためには、「相手の心理」「現在の状況」「客観的なスキルレベル」などの現実を正しく読む力人を動かすコーチングが重要になります。

現実を正しく読む力もコーチングも、コミュニケーションが不可欠です。「観察」し、相手に合った適切な「言葉」と「表現」で伝える必要があります。
なぜなら

  • 人の数だけ、さまざまな個性(得意・不得意、知ってる・知らない、など)があり
  • 人の数だけ、それぞれの仕事のやり方(道具の選び方、コミュニケーションの取り方、など)があるからです。

人の数だけ言語が存在する。

これが私の信念です。

言葉の投球術

正直、私はコーチングもコミュニケーションも自信がありません。ハッキリ言って下手です。しかし、そんな私でも心がけていることがあります。

それは、「表現で緩急をつける」ことです。

野球では、打者の心理・試合状況に合わせて早いボール(ストレートなど)と遅いボール(チェンジアップやカーブなど)を織り交ぜる投球を「緩急をつける」と言います。

同じように私も、相手の心理・現在の状況を考えて、その場に合った表現を選ぶように心がけています。ボケや笑いが効くと思えば、なりふり構わず突っ込んだりボケたり、シリアスさが必要な状況では、一転、真摯に話をしたり。相手と状況に合わせ、その後の展開を考えながら、話すテンポ、声の大きさ、表情を駆使して、自分なりの表現で「緩急」をつけるようにしています。

おそらく多くの人が無意識にやっていることでしょう。それを「人の数だけ言語が存在する」と、意識してみてはいかがでしょう。自分の話したいことを自分の好む言葉や表現方法で伝えるのではなく、相手と状況に合わせて、意識して使い分けてみるのです。

ちなみに私の場合、緩急がかなり極端なので注意されることもあります。どう極端なのかは想像におまかせします(笑)が、自分でも、かなり極端だなと思っています。
日々仲間たちと働き、存分に遊び、ついでにこうして連載を書いていることを考えると、私のこのコミュニケーション方法は、それなりに効果があるのでは?とも思っています。もちろん、改めるべき部分は多々ありますが。

人の数だけ言語が存在する

これからもこの信念を胸に、言葉の投球術を磨きたいと思います。せめて怒られないぐらいにはなりたいなあ(苦笑)。

 

■今回の食べ歩き

CURRY BAL くじら

ワイン

JR高円寺駅北口「大一市場」に居を構えるカレー+ワインが売りの不思議なBAL。お店に入ると、ショーケースに入った素敵なタパスたち(基本、日替わり)が出迎えてくれます。
ショーケース

この日(12月某日)は、野菜の甘さ爆発「カブとベーコンのホワイトソース」と肉の旨味たっぷり「ミートローフ」をいただきました。
カブとベーコンのホワイトソース
カブとベーコンのホワイトソース

ミートローフ
ミートローフ

ここに来たら、〆のカレーは欠かせません。スパイスの配合からこだわりまくっているカレーは、高円寺でも1・2位を争う美味しさです(中川比)。
ココナッツカレー
ココナッツカレー

ワインやカレーが食べたくなったら、是非お越しください。
ちなみに、小さいお店(座席数10人ぐらい?)なので、1〜3人ぐらいの少人数で行くことをおすすめします!


これまでの食べ歩き

食べ歩きSEの「野球っぽいお仕事の話」コーナー

@shinyorke
書き手:中川 伸一


1 Comment

【野球っぽいトーク番組の話】言葉の投球術(続き) | ShinYorke([try,retry]).run() · 2013年2月3日 at 12:22

[…] 言葉の投球術:食べ歩きSEの「野球っぽいお仕事の話」(3) […]

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