セッション:[G-2] How to resolve Conflict スピーカー:Rumiko Seya |
Track G午後2つめのセッションは、特定非営利活動法人 日本紛争予防センター(JCCP)事務局長であり、著書『職業は武装解除』でも有名な瀬谷 ルミ子さんです。
すでに、公認レポーターの柴田さんが素晴らしいレポート「本当の価値、その原点 – 楽天TC2012 レポート(6)」を公開しているので、本レポートでは、純粋に私が感じたことを述べようと思います。
■#rakutentechに武装解除業界のチャーリーズ・エンジェルがやってきた!
私が本セッションを聴講しようと思ったきっかけは、ちょうど参加登録をしようと思っていた頃にスタッフの川口さんが瀬谷さんの参加を告知したことでした。その時は「技術に関するカンファレンスに、なぜ武装解除の専門家!?」という疑問から、興味を持って聴講しようと決意しました。
瀬谷さんの著書を読んでおらず、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演した回(2009年4月21日放映「銃よ、憎しみよ、さようなら」)も見ていなかったため、ネットで経歴を調べたところ、
- 20代で、紛争地域でDDR(Disarmament:武装解除, Demobilization:動員解除, Reintegration:社会復帰)を経験。
- 30才で、日本紛争予防センター事務局長になり、現地国、国連、外務省など、さまざまな組織から名指しで要請を受けてDDRの支援を行なっている。
ということを理解しました。
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」のスタッフブログ「2009年04月21日(火)武装解除 瀬谷ルミ子さん」にいたっては、DDR界の“チャーリーズ・エンジェル”と呼んでおり、いったいどんな人が来るのかワクワクしながら参加しました。
■瀬谷さんの武装解除は、心のケアの側面が強い?
登壇した瀬谷さんは、DDRの漠然としたイメージからかけ離れた、華奢で繊細そうな女性で、いたって普通であることに驚きました。しかし、実際に彼女がやっていることは、兵士達が紛争の相手を憎む思いや、武装解除後の不安をヒアリングし、粘り強く平和的解決を模索する仕事なのです。社会復帰を促す現実的な側面はありながら、極めてメンタルの側面が強いように思いました。
■DDRもIT業界も目的は同じ「世界を変えること」
もう一つ意外に思ったのが、瀬谷さんが話していた「DDRもIT業界もやっていることは同じだよ」という話。「Impact」「Outcome」「Output」という3つのキーワードを使いながら、瀬谷さんの仕事の目的、そして聴講しているITエンジニアの目的は共通していると話しました。
瀬谷さんの仕事の目的は、社会をより良いものにするために変えること、ソーシャル・イノベーションを起こすことだそうです(Impact)。しかし、それは、とてつもなく壮大で困難なため、社会を構成する個人の意識を変えることを目指し(Outcome)、個人の意識を変えるために社会復帰などのサービスを提供しているのだ(Output)と言います。
それは、IT業界も同じことで、
- 世界をより良いものに変えていく(Impact)ために
- 個人の価値観やライフサイクルを変える(Outcome)ような
- 製品を作っている(Output)
とのこと。
この Impact〜Outcome〜Output は、瀬谷さんの前に講演したJeff Pattonさんも話していたことであり、Jeffさんの「ソフトウェアを作るためにここにいるのではない。世界を変えるためにここにいるのだ」という言葉と、同じことを言っていることに気付きました。
@haradakiro @kawaguti 瀬谷さんの活動がDesign Thinkingの一例になってるということでしょうか?
— Yohei Onishiさん (@legoboku) 10月 20, 2012
@haradakiro @legoboku その話を @seyarumi さん本人にできたからよかった。そしてお互いにできることがあるのもわかった!
— Yasunobu Kawaguchiさん (@kawaguti) 10月 21, 2012
ドメインが違うから表面的に見えるものは違っていても、われわれは本質的に、同じ目的を共有しているというのが、Track Gの趣旨だったのです。
(G-3のセッションは、残念ながら聴講できていませんが、同じ流れのセッションでしょうか?カンファレンスのプログラム委員って、こういうメタ思考でセッションを組み立てているんですね!すごい!)
■一個人として「世界を変える」とは?
最後に、個人にとっての「世界を変える」という話をしましょう。
瀬谷さんの話もJeffさんの話も、かなりスケールの大きい話でしたが、私のような普通の人にとって「世界を変える」とは無関係な話でしょうか?
いいえ、無関係ではないと思います。自分が置かれた状況に応じて、変えたい世界のスケールを捉え直せばいいのだと思います。最初から世界そのものを変える人は、誰もいません。世界を構成する小さい問題に関心を寄せ、それを解決しては次の問題に取り組み、やがて、より大きな問題に取り組んでいくのだと思います。
その時は、Jeffさんが講演の中でDesign Thinkingのプロセスとして紹介した、
- 解くべき問題に共感し(empathize)
- 問題をはっきりと捉え(define)
- 幅広く可能性を考え(ideate)
- 施行し(prototype)
- 自分の理解が正しいことを確かめる(test)
という一連のプロセスを回していくと良いんでしょう!
私も、日々、取り組んでいる組み込みソフトウェアの業界で、まずは手の届く範囲で世界を変えていきます。
参考
- 特定非営利活動法人 日本紛争予防センター(JCCP)
- 瀬谷 ルミ子さんのブログ:紛争地のアンテナ
- 瀬谷 ルミ子さんの著書『職業は武装解除』
公認レポーター 大西 洋平