セッション:[G-2] How to resolve Conflict スピーカー:Rumiko Seya |
■共通点は「世界を変えること」
今回、楽天テクノロジーカンファレンスの企画において、川口さんが実現のために最も力を入れたセッションが、この瀬谷さんのセッションだそうです。(*1)
テクノロジーカンファレンスでなぜ、技術には一切関係ない「武装解除」なんでしょうか。共通点は何なのでしょうか。
それは「世界を変えること」です。技術は何のためにあるのか、私たち、あなたたちは、なぜ、ここにいるのか。そういうことを問いかける大事なセッションです。
かく言う私も、瀬谷さんの著書『職業は武装解除』を読んで、すっかり彼女のファンになった一人です。一番楽しみにしていたセッションでした。
■DDRという活動
瀬谷さんが語ったのは、自身の活動であるDDR(Disarmament:武装解除、Demobilization:動員解除、Reintegration:社会復帰)についてでした。
紛争によって、土地も人も全てが破壊され焼き尽くされ、生き残った人々の心は憎しみと絶望に塗りつぶされて、あまりにも無惨に荒れ果ててしまった場所。そこに平和と和解、自分たちで社会を立て直すという希望、そしてそのための力、それらを人々に授ける、そんな素晴らしい仕事です。間違いなく、世界を変える仕事と言えるでしょう。
若くして世界を変え続ける瀬谷さんの原点は、どこにあるのでしょうか。
■Impactを生み出すことが役目
瀬谷さんは自身の活動を紹介する中で、Jeff Pattonさんとまったく同じことを言いました。
生み出される出力(Output)、すなわちサービスやプロダクトで終わりではない。
それは、始まりに過ぎない。
そこから結果(Outcome)として、人々のマインドや振る舞いに変化が起こる。
それがImpact、つまりソーシャルイノベーションにつながる。
瀬谷さんの仕事は、Impactを生み出す事です。そうでなければならないのです。
■和解への厳しい道のり
瀬谷さんの仕事は、和解をもたらすことです。平和を求める人々ではなく、和解という言葉なんて聞きたくもない、殺したいほど憎み合っている、そんな人たちに和解をもたらすのが仕事なのです。世界を変える仕事です。想像もつかないほど大きくて、難しい。
瀬谷さんは、DDRプログラムの中で、家畜を育てるプロジェクトを開始しました。収入基盤を再生しなければ生きていけないからです。そして、収入を得ようと家畜を育てる中で、憎しみ合う人々が協力するようにしました。それによって和解が生まれたのです。
口で言うほど簡単なことではないでしょう。人の心は簡単に変わるものではありません。きっと他にも、さまざまな問題を解決していったのだと思います。
世界を変える、という壮大な仕事。
どこからそのエネルギーは湧いてくるのでしょうか。その源は何なのでしょうか。
■ひたすら考え続けていた「自分にできること」
著書『職業は武装解除』に書いてあったことが、瀬谷さんの言葉でどんどん補完されました。本人の話を聞く事と、書かれたものを読む事とでは、やはり恐ろしいほどの開きがあるものですね。
瀬谷さんは、自らの劣等感を強調しました。優秀な家族の中でどうやったら役に立てるのか、ずっと考えていたと言います。
瀬谷さんの故郷は群馬の田舎です。借金もあったそうです。みんなががんばって稼いでいる中で、自分に何ができるのか。ずっとずっと考えていました。
一番得意なのは勉強。でも全部をしていては何にもならないと考えて、英語に的を絞りました。英語が素晴らしく得意になりました。けれども、得意な英語でもネイティブには勝てない。何かもっと、何かもっと必要で。
「他の人とは違うことがしたい」「自分だからこそできることって何だろう」
そればっかりを考えていたそうです。
■選択肢は自分次第
そして、高校三年生になって、ルワンダの難民キャンプで死にいく親子の写真を見た時でした。たくさんの「なぜ」が溢れて止まらない。なぜ、世界は助けられない、なぜこうも違う。世界は複雑だ、と彼女は言います。
写真の向こう、世界中から見つめられる彼らもまた、権力や世界に翻弄される者であり、自分もまた、社会や世界に翻弄される。そこは変わらない。
けれども、自分には選択肢がある。一方的で圧倒的な力に押しつぶされている彼らにはない選択肢が、自分にはある。それを狭めているのは自分自身です。選択肢を活かすも殺すも、自分次第なんです。
これが彼女の源なのだと思います。
選択肢。自分の選択肢なんて考えたこともなかったのですが、諦めの声を捨て、できないという思い込みを捨てて、自分だからこそできることを探すという選択肢。そんな選択肢が私にちにはあるのです。
■私たちは何ができるのか、何のために何を成すのか
Jeff Pattonさんと瀬谷さんの話を聞いて考えました。
自分には何ができるのか、自分は何のためにここにいるのか、問うことを諦めないで続けよう。それがきっと、自分なりの選択肢を持つことにつながると思います。安定という夢を抱いた日本社会の中で。
■世界を変えるひとつの方法 〜ボランティア
瀬谷さんは、IT技術者にボランティアとしての協力を呼びかけていました。武装解除のデータベースなど、エンジニアを必要とする場所があるようです。
もしあなたに、その選択肢があるならば、ぜひ、彼女が事務局長を務めるJCCP(日本紛争予防センター)に連絡を!世界を変えましょう。
書き損じのハガキを送ることでも、命が救われます。もちろん、直接の募金も大歓迎です!
参考
公認レポーター 柴田 昌洋