セッション:[G-3] System Development, Culture and “Shikatanai”

スピーカー:Masa Nakamura

最も早い時期に、日本のアジャイルの歴史を切り開いた一人であらせられる、Masayang様のセッションです。最初は小さな企業で、MS-DOSやWindows1.0を相手にシステムを作り、やがてNRI、そして今はNRIアメリカで活躍しています。

 

■エピソード「仕方ない」

中村さんのセッションは、映画『Office Space』(邦題『リストラ・マン』)の1シーンの上映から始まりました。

主人公ピーターの「仕方ない」という顔。
テスト仕様書に文句をつけられ、「メモは受け取りましたよ」と返答したのに、また別の上司がやってきて同じ文句を言われる。いろいろ言いたいことはあるけれど、言えない。ひたすらうんざりして憮然とした、何とも言えない面持ち。まさしく「仕方ない」。すると、そこに電話がかかってきます。受話器を取ると、オフィスから「メモは受け取りましたか?」

そんな大企業について、小さな企業から、NRIという大企業まで経験している中村さんが解説をします。

 

■ソフトウェア開発の歴史をひもとく

そもそも、なぜソフトウェア開発は、ここまで壮大で面倒なプロセスを持つようになったのでしょうか。中村さんは、1980年代へさかのぼってソフトウェア開発の歴史を語り始めました。

時は1980年代、今は昔、メインフレームと呼ばれた計算機IBM 3/370 のお値段は100億円。部屋を埋め尽くす大きさでありながら、スペックはメモリ1MB、CPU1MIPSという、巨体の割に脳みその小さい恐竜のようなマシン。

この時代、プログラミングは今とはまったく異なりました。個人所有のPCなんてものはありません。作成したプログラムをパンチカードに印字し、車でデータセンターに運び、コンパイラにかけます。ここで一文字でも打ち間違いがあれば、最初からやり直し。一日は終わってしまいます。こんな調子ですから、バグを修正するだけで数ヶ月かかり、機能そのものの修正には、季節が一巡してしまいます。
筆者の父はこれを経験しているはずですが、今となっては想像を絶する開発環境です。開発プロセスが長大でバグを許さないものになったことも、想像に難くありません。

さらにさらに、中村さんによれば、そもそもソフトウェア開発は、急ぐものではなかったのです。マシン自体が100億円もするのです。利益を出すのは、何年も後になると考えられていました……。

 

■時代とテクノロジーの変化が新しいプロセスを生む

翻って2000年代、ソフトウェア開発はどうなったでしょうか。
インターネットとGUIが主流になり、私たちは、まったく新しい複雑さを抱えるようになりました。インターネットは、予測できないユーザー数とスケールの問題、そしてセキュリティの問題を持ち込みました。GUIの発達は、見栄えと使い勝手というデザインの問題を生みました。かつては、CUIで文字を出力するだけ。インターネットもなく、ユーザーなんて数えるほどしかいなかったのに。

また、コンピュータは個人の持ち物になりました。
毎年モデルチェンジされるマシンに対して、IT投資もすぐに利益を出すことが求められます。ソフトウェア開発に求められる複雑さと早さは、かつてとはまったく異なってしまったのです。やり方を変えないわけにはいかないでしょう。
かくして、アジャイルやリーンプロセスが生まれてくるのです。

 

■ルールを破れ

さて、ここで大企業と小さな企業との差が出てきます。中村さんはNRIという大企業にあって、やり方の変更を主張しましたが、すっぱりと拒絶されたそうです。小さな企業は、新しいやり方をどんどん採用し、変化していきました。組織が大きく官僚的であると、標準化されたプロセスから離れること自体が罪になるのです。
はてさてこれは、大企業であれば「仕方ない」のでしょうか。

中村さんは言います。
ルールを破れ」と。

法律を破るわけじゃあ、ありません。
無視しても影響ないと思ったルールをまずは一つ、無視してみる。何も問題が起きないなら、そう、それはいいことです。そのルールは無くてもよかった、ってことなんですから。次のルールを破りましょう。

もし組織から反応があったら、ディスカッションをしましょう。なぜ、そのルールがあるのか。ルールの目的は何で、本当に必要なのか。今までこうして中村さんは、ルールを変えてきたそうです。

 

■「仕方ない」をぶち壊せ

映画『Office Space』で、この上なく「仕方ない」表情を見せていたピーターですが、彼はすべてをぶち破ることにします。オフィスを仕切る壁をぶち壊し、上司に反抗し……。見晴らしのよくなった席で、ピーターの満足そうな笑顔ときたら、まあ。

映画が再生された途端、会場は爆笑に包まれました。

映画の続きは、ぜひご自身でご覧になってください。あなたがピーターを演じることになるかもしれませんから。


公認レポーター 柴田 昌洋

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