[8/14] Leanがビジネス価値を駆動する – Agile2012 現地レポート(15)

セッション:Scaling Agile with Multiple Teams: Using Lean to Drive Business Value

スピーカー:Alan Shalloway

規模の大きさに向かうために、チームをどのように組織するか。
このテーマで思い浮かべるのは、Scrum of Scrumだろう。Alanの今回のセッションは、Scrumのアプローチとは異なる、複数チームの組織化の紹介であった。大規模なエンタープライズ/サービス開発において参考になるところがあるかもしれない。

 

■全体は部分に制約される

まずはベースとなる考え方、バリューストリームが示される。

Alan Shalloway『Business Driven Software Development』6スライドめより

そもそもバリューストリームの定義として、ビジネス価値を発見するフェーズと、それをデリバリするフェーズに分けて考えられるわけだが、発見フェーズにおいては、塊として価値を捉え、デリバリフェーズにおいては、それをスライスする指向となる。

なぜ、開発がスライス指向になるかというと、レイヤーで開発を分けた場合、組み立てて価値のある単位に戻すまでが時間がかかるからだ(このときのバッチサイズは1つ)。スライスをビジネス価値のある単位で行った場合は、バッチサイズを小さくし、最初の価値をデリバリするまでの時間を短く済ませることができる。

この考え方は、チームの組織化にも適用される。開発規模が大きくなり、チームをレイヤーで分割した場合、全てのチームの作業が終わるまで組み立てができないため、全体のアジリティは最も作業が遅れるチームのアジリティと同等となる。
(ちなみに、これは「全体のアジリティが1つのボトルネックに制約される」というTOCの考え方だ。)

 

■ボトルネックは移動する – Product OwnerとProduct Manager

このアプローチを大規模開発で取った場合、ボトルネックが別のところに移っていく。

このスライドでは、MMF(Minimally Marketable Feature)を新たにStoryに分割し、複数チームで開発するイメージとなっている。この場合、ボトルネックは、開発チームから別のところに移ることになる。

プロダクトの価値と開発チームの作業を最大化することに責任を持つ、Product Ownerだ。

どのビジネス価値がどのストーリーに分かれ、どのチームが開発しているか、Product Ownerがマネジメントを行うこととなる。担うべき役割が広範囲に渡ってしまう。そこで、Product Managerと役割を分担することになる。

Product Managerは、MMFに対して責任を持ち、Product Ownerは、MMFをブレイクダウンしたcomponentやstoryに責任を持つことになる。チームに対しては、SMT(Subject Matter Expert)として振舞う。

再度、バリューストリームとしてまとめる。バックログは複数のチームで共有していることになり、分割されたMMFを再構成するためのタイミングを合わせる。リリーストレインだ。

リリーストレインは『アジャイル開発の本質とスケールアップ』に詳しい。

最後に、5つのキーポイントを示して、Alanのセッションは終了した。

  1. Holistic Approach:全体論的アプローチ
  2. Visibility:可視化
  3. Systems Thinking:システム思考
  4. Flow:フロー
  5. Self-organization with bigger view:広い視野に立った自己組織化

 

■所感

最後に、所感を簡単にまとめる。

Alanの提唱するScaling Agileは、話として合理的でよくできているが、これを実際に日本の開発現場で適用できるかは自信を持って言うことができない。
例えば、Product ManagerとProduct Ownerの役割定義について、組織上、あるいは、ビジネス(予算)的に合意を形成できるだろうか?ぶつかりそうな課題だ。
ただしこの疑問は、あまり意味がないとも言える。AgileやLean、あるいはプロセスがどうあるべきだという議論をしても仕方がないことではないだろうか。

大切なのは、自分の現場やプロジェクトで、何が必要で、そのために誰がどのような振る舞いをし、それをお互いが理解することではないか。

Alanのアイデアはひとつのきっかけであり、足場だ。そこから、どのようにするかは、おのおのの現場でそれぞれが考えることだ。


Agile2012現地レポーター隊「アジャイルクローバーZ市谷 聡啓

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