セッション:[G-3] System Development, Culture and “Shikatanai”

スピーカー:Masa Nakamura

NRI中村さんによる講演「System Development, Culture and “Shikatanai”」では、組織の中にある「仕方ない」という精神を取り払うために、一つずつ壁を取り払うことを提案しています。

 

■至るところにある「仕方ない」精神

講演の冒頭、『Office Space』(邦題『リストラ・マン』)という映画が紹介されました。1999年に公開された、ソフトウェア開発企業を舞台にしたコメディです。

映画では、駄目エンジニアとわがままな顧客との板挟みにあう中間管理職や、駄目エンジニアとQAの板挟みにあうエンジニアが描かれています。彼らは自らの状況を、組織の文化に起因した「仕方のないことだ」と思っています。彼らの企業において、そうした文化はいつ出来たのでしょうか。

 

■イノベーティブ文化と仕方ない文化

中村さんは、これまでのコンピュータ業界の発展を振り返ります。

80年代初頭、ハードウェアは非常に高価でした。広い設置場所も必要でした。速度は遅く、デバッグにも長い時間がかかりました。
90年代に入りインターネットが登場した頃には、ハードウェアも安価になり、よりリッチなシステムを構築できるようになりました。また、インターネットの登場により、新しい販売チャネルも生まれました。この新しい販売チャネルの勝者となった企業が、利益を総取りするような世界が生まれ、ドットコムバブルが起きたのです。

21世紀に入ると、リーン、アジャイルの概念が生まれます。
どれだけ潜んでいるか分からないバグを、10,000行のコードから取り除くよりも、100行のコードから取り除くほうがよっぽど簡単です。このような、よりマネジメントしやすい単位にタスクを区切り、一つ一つ検証しながら進めていくことができるようになりました。
アジャイルは、イノベーションをより高速に行う原動力となったのです。

こうしてこの業界は発展を続けています。
しかし『Office Space』のように、いまだに大きな単位で物事を考え、決断に時間がかかっている企業もあります。そして「仕方ない」文化も、いまだに根を張っているのです。

 

■まず壁を壊せ!

では、『Office Space』の人々はどうしたのでしょう。

冒頭で紹介した『Office Space』のエンジニアは、自分のパーティションを取り除きました。そして上司の反応を見たのです。

私たちも同じように「仕方ない」文化を打破するためには、一つ一つ壁を取り除くことが重要だと中村さんは述べます。
まず始めに、取り除くべきルールを探します。そのルールを取り除いても何も問題が起きなければ、次のルール=壁を取り除きます。もしもマネージャからリアクションが返ってきた場合は、話し合いをし、どうすればいいか決めていけばいいのです。

そう提案して、中村さんは本講演を締めくくりました。

 

■勇気が湧き上がるセッション

「仕方ないという文化は打破していける」という、中村さんの熱い想いが伝わってくるセッションでした。

こうしたカンファレンスや勉強会に参加すると、私たちは理想の世界を垣間見ます。ですが、現実に戻ると「どうしてこうなんだ……」と理想とのギャップに打ちひしがれます。
そうして嘆くのではなく、できることから一つ一つ変えていけばいいんだよ。その想いに触れ、勇気が湧き上がってくる、そんなセッションでした。


公認レポーター 田野口 大樹