はじめまして、中川 伸一と申します。普段はWebアプリケーション開発者として働いています。今回は「第8回 企業内Lean Startup勉強会」のLT登壇者としてレポートすることになりました。
私のLTのテーマは、
「リーンスタートアップ×野球 – マネーボールから学ぶリーンスタートアップ」
企業内事例とは離れた、異色の内容です(笑)。そんな異色のLTをするまでの経緯と、勉強会当日のエピーソードを紹介したいと思います。
■リーンスタートアップとの出会い
私がリーンスタートアップと出会ったのは、プロマネさんがチャットで発した一言でした。
「今度のプロジェクトは、リーンスタートアップを使ってやりたいと思います」
そもそも「リーンスタートアップ」というモノを知らなかった私。でも、使うとなると勉強するしかありません。早速、リーンスタートアップの本を買って読んでみました。「新規事業立ち上げ」「スタートアップ」……。なんかピンと来ないなぁ。
本を読み始めた頃の感想はそんな感じでした。
■初の勉強会参戦と「悟り」
そんな状況の中、プロジェクトリーダーさんから企業内リーンスタートアップ勉強会を紹介してもらいました。
本はほぼ読んだ、でも理解はイマイチ。今のプロジェクト・業務に落としこんで活用するイメージが湧かない。そもそも、プロジェクトが「サービス立ち上げ (スタートアップ)」なわけだから、このままじゃアカン!と思い、勉強会に参加しました。
プレゼンテーション(ECサイトの事例)、ワークショップを順々に消化して勉強会の本編は終わり。最後に登壇した代表の和波さんのプレゼンに出てきたキーワードで「悟り」が開けました。
■マネーボールの手法はリーンスタートアップに通じる
細かい話は忘れてしまいましたが(苦笑)和波さんは例え話として、マネーボールを引用しました。
確かに!マネーボールの手法はリーンスタートアップだ!!
帰り道、マネーボールのエピーソードを思い出しながら、リーンスタートアップに当てはめてみました。確かにハマる。面白いぐらい打線……もとい、理解がつながる。こうして「中川風リーンスタートアップ・メソッドβ版」の基礎ができました。
「ああ、私の頭にリーンスタートアップが “出塁” したな」
理解した内容は、早速業務で使ったり、同僚に手法・考え方を展開しました。
そして後日、今回の勉強会のLT募集があり「これなら行ける!」と判断した私は、LTの登壇者として立候補しました。
■マネーボールとは?
この辺で、知らない方のためにマネーボールを簡単に説明します。
マネーボールというのは、大リーグ球団オークランド・アスレチックスのGM、ビリー・ビーンの半生を元に、統計学でチームを分析・補強する「セイバーメトリクス」という手法と、アスレチックスにおける実例を紹介したノンフィクション書籍です。2003年発行(日本語版は2004年)、昨年、映画化(ブラッド・ピット主演)され、日本でも公開されました。
- Wikipedia『マネー・ボール』
- Wikipedia『マネーボール(映画)』
- 書籍『Moneyball: The Art of Winning an Unfair Game』(原語)
- 書籍『マネー・ボール』(日本語版)
この本で紹介している事例はいくつかありますが、LTを行うにあたり次の事例に着目しました。
- 高額な強打者を統計学的に分析して、代わりの安物打者と交換する。
- 要らない選手を高く売り、欲しい選手を安く買う、チームの「全体最適化」。
テーマが決まった私は、一心不乱にKeynoteのシートを作り、気がついたら土日の大半が無くなっていました。
■本番
勉強会の前に、同僚にお願いしてプレゼン練習を行ってから本番を迎えました。
実は私、LTはこの日が通算2回め。最初はちょっとオタオタしてしまいました(苦笑)。
プレゼンの前に「映画(または書籍)のマネーボールをご存知の方、挙手していただけけますか?」と問いかけ。……意外と少ない。不安を抱えたまま、プレゼンを始めました。
リーンスタートアップとの出会い、和波さんの一言、マネーボールの話。ここまで話してから、2枚の図を出しました。
上記の図は、リーンスタートアップではおなじみですね。
上記は私が定義した「マネーボールにおけるフィードバックループ」です。リーンスタートアップにおける「仮説」を、あえて「補強仮説」という造語にしました。
「補強仮説」というのは、選手補強(FA/トレード/ドラフトetc.)の根拠です。
- 「キャッチャーが引退したので、FAのX選手を獲得しよう」
- 「ショートがいないなあ。二軍のY選手と引き換えにヤンキースからもらうか」
これが「補強仮説」です。他の定義は説明不要でしょう。
最終的には「学び」にあたる部分が「新たな補強案(補強仮説)」で一周回るようにしました。ちなみに、MVPは「選手」、バッチサイズは「ポジション」です。ピボットは選手・チームの成績で決まると定義しました。
上記を説明した後、映画にもなったエピソード「ジェイソン・ジアンビとジョニー・デーモンの穴を埋める」話を題材にプレゼンを続けました。ジオンビーの代わりに、3人の選手で穴埋めする話です。
皆さんのリアクションを確認する余裕はありませんでしたが、頭を働かせて自分なりに解釈しようという思いや熱意が伝わりました。
エピソードその2(テーマは「トレードで儲ける」)も用意していましたが、時間の都合上、話さずに私のプレゼンは終わりました。最後に和波さんが「これは革新会計の話です」と締めてくださいました。
■たくさんの反響
勉強会の後、皆さんから感想や意見をたくさんいただきました。
- マネーボールを読む(または見る)モチベーションにつながった。
- 新しい視点(統計学を取り入れるという意味で)で野球を見ることができると感じた。
- 他のスポーツ(例えばサッカー)にも、置き換えが効くんじゃないか?
- (他の人たちのLTと比べ)異色で良かった。(いい意味で?浮いていて?)
- 2つめのテーマ(トレードで儲ける)も聞きたかった。
他にも、リーンスタートアップの定義との置き換え話などたくさんありました。どれもこれもうれしく、刺激になりました。
こんなに話(もちろん野球以外の話も)が、たくさんできた懇親会の熱気は忘れません。「懇親会に価値あり」というのは本当でした。これはすごかった。詳しくは言えないけどね!(笑)
■最後に
こうして私の長くて充実した1日が終わりました。
この日、私がマネーボールと出会ってから8年間、ずっと思っていたことが確信に変わりました。
リーンスタートアップ(またはビジネス全般)に野球の考え方は通用する
(逆も然り)
そして野球ファンだけでなく、他の人たちにも伝わるんだということを。同時に、リーンスタートアップの考え方・やり方に、一石を投じることができたんじゃないかな?(勉強会の趣旨はそっちだからね、私(笑))
一方で、これからが本当のスタートアップだ、とも思いました。
普段の業務に生かしたり、(一ファンとして)野球界に知見を還元したり。やれることはたくさんある。やはり、ちゃんと生かさないとね。しっかり学び、生かした結果を発表できるように日々精進したいと思います。
最後に、野球好きらしく、デレク・ジーター選手(ニューヨーク・ヤンキース遊撃手&キャプテン)の言葉でこのレポートを締めたいと思います。
練習試合は終わりだ。
以上でレポートは終わりです。ありがとうございました。
公認レポーター 中川 伸一
3 Comments
shinyorke.(又はシンさん) (@shinyorke) · 2013年8月3日 at 22:17
@halvish 野球と同時にスタートアップ好き私にとって、引っかかるネタです。←NYのスタートアップ事情 ちなみに、私はアスレチックスのファンで、スタートアップと絡んでこんなネタ発表したことあります(去年の話ですが)。 http://t.co/kH4cKwKPka
何故リーンスタートアップをやるのか2013 | ShinYorke([try,retry]).run() · 2013年7月22日 at 19:27
[…] キッカケおよび、去年私が何をやったかはこちらの記事(今更ながらマナスリンクの”どこぱん”氏に感謝。サンキュー)に譲るとして、この記事の本題に入りたい。 […]
野球から学ぶスクラムの現場〜野球好きSEのチーム論 | Lean Baseball · 2014年1月10日 at 21:51
[…] その時の話はコチラに譲るとして、もしもこのエントリーを読んで「おお!」って思った方、いましたらぜひともマネーボールを読んでみてください。 […]
Comments are closed.