「Fearless Change – 不安を乗り越えて組織改革を推進するには」 – リンダ・ライジング 氏


Agile Japan 2011のために来日したリンダ・ライジング氏は、著書のFearless Changeの中から、彼女のお気に入りのパターンを紹介し、チームや組織、そして社会を変えていく上でどのようなパターンを適用していくことで実現ができるかについて紹介した。

Fearless Changeとは

文字通り、恐れずに変わっていくこと。変化とは誰にとっても恐ろしいものであり、アメリカでは心筋梗塞でなくなる人が多いが、例え医者が「生活を変えなくては死んでしまうよ」と患者に訴えかけても実際に行動を変えることができる人は10%足らずであるという。
生死の境にあっても変えるのは難しいことから、いかに変化するのは大変なことかがわかる。リンダ氏は、なぜ人が変わることができないか調査したところその人たちはあるひとつのパターンを適用していなかったからだという。

パターンとは戦略を短いキーワードで表したもの。パターンは他のパターンと繋がり、パターン言語を形成している

 

最初のパターンはEvangelist

であり、全てのパターンランゲージの中で最も重要なパターンでこれがなければ他のパターンは成立しない。それは自分が変化を起こすエージェントとして自分自身のアイディアを信じることだという。変化を起こすことに失敗した人たちはまずそれができることを信じておらず、死の間際であっても変えられることを信じていなくてはその変化を起こすことはできない。そしてこのパターンは自分自身だけでなく、チーム、会社、そして国を変えるための最も重要なパターンだという。

 

続けて、人が学ぶサイクルに即した一連の4つのパターン

がある。Test the Waters(味見をする)Timie of Reflection(振り返る)Small Success(小さな成功)Step by Step(一歩一歩)であり、まず小さなトライアルを行った結果を振り返り、その試した結果の成功事例を次にいかして一歩ずつ学びや変化を起こす。こうした小さな実験を行っていくことで学習に適用し、次のステップをとっていくことが唯一の学びであり、変化のための方法であるという。

どのようなことでもまずは一歩ずつしか変えられない。この小さな変化を起こすためにまずやってみること(Just Do It)、そして胃袋と訳されていたパターンであるDo Foodが効果的だと言う。
変化のために何か新しい行動をおこそうと考えると、「自分はまだそれについて十分知らないのではないかと考えて待ってしまう。勉強してからでないとできないと考えてしまう。「ちょっとでも、まずやってみることが大事」であるというのが、Just Do Itだ。

 

次に人を巻き込む上で大事なのが、Do Food、

食事を共にしながらのミーティングを行うことだ。二つのグループに同じ情報を与え、ひとつのグループは食事しながら、もう一方のグループは食事なしで打ち合わせをしてもらった結果、何度やっても食事があったグループがその打ち合わせの事項に賛成するという。この時、アイディアの質は関係ないが、食事の質は大きく関係するとリンダ氏が話すと会場の中に笑いの渦が生まれた。

 

「エバンジェリストの仕事は、みんなの質問に答えていくこと

だが、変化はひとりずつ起こる。そのために一人一人の質問に答えていかなくてはいけない。」リンダ氏によると、全ての人間の判断は感情に基づいて起こり、人は意識する前に結論を下してから理由を後づけしているという。そこで、人を説得しようとするときは、その人がどのタイプに当てはまるかを見極めて対応するのが効率的であると述べ、5つのタイプと各タイプにおける対処方法を紹介した。

最初のグループはイノベーター。新しい物好きのこの人たちには、「ただこれは新しいんだ、クールなんだよ、と言うだけでいい」。次のグループはアーリーアダプター。イノベーターと同じく変化にはオープンだが情報を必要とするグループのため、たくさんのデータを与えて利点を教えることが有効であるという。3つめのグループはアーリーマジョリティ。「この人たちは他の人はどう思っているのかを気にする。そのため、他の会社や他のチームがどうやっているのか、自分たちと同じグループの競合が何をしているのか事例を紹介するのがよい。」4つめはレイト・マジョリティーで彼らはどうしてもやらなければいけない状況になるまで動かず、ラガード(Laggard)と呼ばれる最後のグループは、「このグループは絶対にやらない。やらなくてはいけなくても、やらない方法を見つけるグループ」だ。
ここで注意しなければいけないのが、イノベーターが良い人で、ラガードが悪い人だということではなく、場合によって人はどのグループを選ぶかが変わってくるため、ある面ではイノベーターである人が他の場面ではラガードになるという。そして一番注意を払わなければならないのが最後のラガードのグループにいる人だ。ラガードになるのには理由があるため、その理由が何か、敬意を表して意見を聴くことが大事であるという。

 

「エバンジェリストの陥りがちな罠

に、情熱的になりすぎてしまうということがある。自分たちの意見に反対している人を奴らは間違っていると敵対視してしまう。それを避けるために自分が理性的になるのを助けてくれる人を周りに置くこと。そして、Ask for HelpJust Saty Thanksの二つのパターンが役に立つ。人に助けを求めることとありがとうと伝えることだ。」

自分を売るのではなく、アイディアを売るようにし、その上で人を巻き込んで助けを求めて関係を構築していくことが重要であるという。また「Just Say Thanks」、感謝を伝えることについても最初はこれがあまり重要ではないと考えていたが、世の中にはどんな激務にも耐えることができるけれど、誰もありがとうと言ってくれなかったために心が折れてしまうことがるというあるビジネスマンのエピソードを紹介し、他の人に感謝する人はより長生きをし、健康で、風邪を引きにくく、より幸せでゴールを達成する可能性が高いという。

 

リンダ氏は「皆さん、話を聴いてくれありがとう。(感謝をしたから)これで私も長生きできるね。」と講演をまとめた。


– 公認レポーター:美谷 広海 (楽天株式会社) –