「リーンUX流「顧客発見」ワークショップ」 〜プラグマティック・ペルソナで顧客を見える化〜

樽本 徹也氏 (インストラクター:荒川 正義氏、徳見 理絵氏、金 智之氏)
セッション詳細


 

アジャイル meets スタートアップ!」このテーマで始まったAgile Japan 2012 東京サテライト
東京サテライト オープニングでアジャイルのもうひとつの答えとして、株式会社ソニックガーデン倉貫氏が提示した「スタートアップ」。このリーンスタートアップの特徴は製品開発と顧客開発を並行して行うことです。顧客開発の第一ステップは「顧客発見(Customer discovery)」です。そして顧客発見プロセスの中でも、一番最初 に行うべき作業が「ペルソナ」の作成です。

アジャイルUCD研究会樽本氏のワークショップでは、参加者が実際にペルソナの作成・検証を行いました。

 

■ペルソナとは何か


樽本氏はワークショップ導入部で、UCDの「データ駆動ペルソナ」とリーン/アジャイルの「プラグマティック・ペルソナ」、どちらが正しいかについてしばしば論争がなされる点を紹介し、その上で「ペルソナはツールであって目的ではない」「ペルソナを作って、何をするかが重要」と説明しました。

ただし、WFとアジャイルでは要求の捉え方が異なる点に注意しなければならないとも説明し、

  • WFにおける「要求は固定」であるため「厳密に要求を検証する裏付けが必要」
  • アジャイルにおける「要求は可変」であるため「効率よく要求を導く手掛りが必要」

という点を挙げていました。

これらの異なる点を踏まえ、
「チームにとって必要なペルソナがどちらかを考えるべきであり、どちらが正しいかではない」
そして、
「実際にユーザーに確認し、厳密な要求の検証を行う方法では時間が掛かりすぎる」
「アジャイルなチームにとって、金のペルソナ(データ駆動ペルソナ)では過剰」
それ故、「プラグマティック・ペルソナ」が必要であると紹介しました。

 

■ワークショップ「明るい悩み相談室」


今回のワークショップは「明るい悩み相談室」と題し、2パターンのインフォーマントについて、ペルソナの作成・検証を行いました。今回対象となったインフォーマントは「朝起きられない人」と「方向音痴の人」でした。

 

Step1. 仮説ペルソナ

参加者1人1人がそれぞれプラグマティック・ペルソナの作成を行いました。

【ポイント】

  • 名前は覚え易いものを
  • アイコンを必ず描く(アイコンによって識別することが目的)
  • 行動特性が最も重要

 

Step2. 仮設ペルソナその2

各々が作成したペルソナを持ち寄り、チームで統合したチームペルソナの作成を行いました。

【ポイント】

  • チームビルディングを兼ねて自己紹介
  • 各々が作成したペルソナも紹介
  • チームペルソナは一匹

 

Step3. 記者会見

実際にインフォーマントに対しインタビューを行いました。

【ポイント】

  • 普段の行動に関する質問をする
  • 作成したペルソナを検証できるような質問をする
  • 質問する側が、行動体験を持たないことに関して質問する

 

Step4. 仮説ペルソナその3

チームで統合したチームペルソナの改定を行いました。

【ポイント】

  • 記者会見で得られたデータを基にペルソナを改訂
  • 新しい紙に書く
  • データを基に作成されるペルソナが一匹とは限らない

 

最後に

最後に、チーム間でチームペルソナを比較した結果、ほぼ収束した内容となり、インタビューを行ったインフォーマントから見ても、ほぼ違和感のないペルソナとなりました。

このワークショップを通して、

  • ペルソナの検証を重ねることで、価値を届ける対象を正確に捉えることができる
  • プロダクトの価値を高めるには、こういった検証プロセスはUXer等の専門家だけでなく、開発者も積極的に学び参加すべき

と強く感じました。

 


東京サテライト公認レポーター:今江 雅俊
(早版をベースに加筆修正した正式版レポートです。)