「The Surprising Science Behind Agile Leadership」~アジャイルリーダーシップの背後にある驚くべき科学について~


■「アジャイルサムライ」のJonathan Rasmusson氏登場!

これまでのAgile Japanでは「大御所」と呼ばれる方々の基調講演でしたが、今回は海外でも「Post Agile」と言われる新進気鋭のジョナサンをお招きしての基調講演が始まりました。
アジャイルサムライ」という、俯瞰的で最初に読むにはもっとも適した網羅的な本を出された方なので、どんなセッションになるかと思っていましたが、かなりモチベーションやマネジメントにフォーカスしたお話でした。

■重要なのは自律と熟達と目的


これまでの決まりきったものを作る「マニュファクチュアリング」の世界では、「パノプティコン」のような監視下で働くことや、生産量を比較したり報酬をインセンティブとして機能させたりすることで、おのおのチームは競い合い、結果として工場全体の生産性が向上することに十分に効果があったのかもしれません。しかし、現代のソフトウェア開発、そう、クリエイティブな作業では、もはやそれは通用せず、自律(Autonomy)、熟達(Mastery)、目的(Purpose)が重要となっているとジョナサンは強調します。
ジョナサンは、アジャイルリーダーシップモデル —サーバントリーダー(Servant-leader)、自己組織化(Self-organizing)、フラット(Flat)、権限移譲(Empowered)、責任を果たす(Accountable)、自律(Self directed)、メリットに基づく(Merit based)—が、なぜうまくいくのか最初は分からなかったが、ダニエル・ピンクモチベーション3.0を読んで納得したそうです。

(当日、ジョナサンがこの本の要点の動画を紹介してくれました。言語選択で日本語字幕にて視聴できます! → こちら

■だからこそのインセプションデッキ!

ジョナサンはソフトウェア開発の作業を演劇に例えました。作業の結果はチームメンバー次第、ふたつと同じプロジェクトはないし、プロジェクトが終わればメンバーはまた別の道にいく。また会うかもしれないし、もう会わないかもしれない。
そんな環境下だから、プロジェクトの目的や意味、その中でのメンバー個々人の目的や意味が重要になってくる。だからこそ「アジャイルサムライ」の中でもハイライトのひとつである「インセプションデッキ」が重要になるんだろうな、ということを個人的にふと思い返したりしました。

■ジョナサンからのお土産


さて、かつての「ニュートン力学」のように、線形で予想できてコントロール可能で……といった安定しているのが好きなモデルから、「量子力学」のように不確実性、予期しないことが起こり、変化を受け入れなければならない、といったカオスなのが当然なモデルへと世界が変わりました。われわれはどうしたらよいのでしょうか?
ジョナサンはそんな私たちにメッセージを送ってくれました。みんないい仕事をしたいと心の奥底では思っているんだから、マイクロマネジメントではなくて、管理の手綱を緩め、チームが自律的にゴールに向かっていける環境をつくることが大事だと。やろうとしている人の邪魔になってはいけない。そして、技術の進歩が早いんだから、自分がこれまでやってきた同じやり方が正しいとも限らないし、後生畏るべし(こうせいおそるべし)、と。

なお、当日の基調講演の様子は、Ustreamにて公開されています!


公認レポーター:佐藤 嘉亮