アジャイル入門セッション
「楽天での実践から学んだアジャイルのはじめ方」
セッション詳細
藤原氏は、楽天株式会社の開発アーキテクチャ部で標準化・開発ツール導入・現場のサポート等の活動をされている。本講演の内容は、彼がこれまで取り組んできた社内へのアジャイルの導入などの実践経験をもとにしたアジャイルスタートアップのコツの紹介である。教科書には載っていない現場の生の声であり、アジャイルに興味がある・導入を検討している人たちの多くが講演に集まった。
■アジャイルを知る
国内外でさまざまなイベントが行われている。そんな中で最近になって、
- リーンスタートアップ
- 継続的デリバリー
が出てきた。
イベントなどの発表を見ているとトレンドは、
- “アジャイルをする”の国内
- “アジャイルになる”の国外
であり、国内と国外ではアジャイルにおけるステージが違う。いずれにせよアジャイルは次の10年が始まったばかりであり、今年からまた新たなスタートであると藤原氏は感じているそうだ。
■変化を起こす
コーチとして現場のサポートに入る際にヒアリングした結果、現場から求められていることは、
- 開発スピードを高めたい
- 効率よく仕事したい
であった。そして実際にコーチングをするチームを観察してみると、外からの依頼で仕事が増えて改善の時間がとれていないなど効率の悪い現状があった。これらは昔からあまり変わっていない現場のジレンマでもあり、ここにコーチのニーズが生まれてくる。
したがってコーチの仕事は、
- できなかったことを一緒にやる
- 常識を見直し改善につなげる
- 現場を勇気づける
- 一緒にやって問題を再認識させる
など現場を中心とした活動になる。そのためには、もちろん事前に上層部との信頼関係を築き、ある程度任せてもらえる環境を作っておく必要がある。
というのも本当の変化とは、経営層でも中間層でもなく現場から生まれるものである。だからこそ問題を抱えている現場にアプローチして、そこから活動をスタートすることを目指したい。現場の彼らが改善に興味を持って、実際にその改善に取り組むことが一番大事なのである。
ここからは実践編。準備と開始におけるポイントを以下にまとめた。
- 準備
- どんな問題があるのか
- どんなゴールがあるのか
- どんな理想があるのか
コーチと働いてうまくいくことが目的ではないので、短期的な目標(リリース)だけでなくその先の理想を確認することを意識する。ここで確認したことはことあるごとに何度でも振り返る。
- 開始
- チームのポリシーを決める(インセプションデッキ)
- レポートラインをスマートにする(短い朝礼、タスクボード、振り返り)
- 開発のお作法をスマートにする(オールインワン開発環境、自動化)
実際にアジャイルのプラクティスを使って改善活動を行って、イテレーションをまわす。
■まとめ
アジャイルの始め方は、小さいところから少人数でのスタートがやりやすい。その次のステージとしてより大きな組織や企業レベルでのスケールがあるが、それは一気に難易度が上がる。そして藤原氏自身はアジャイルのスケールは狙わないことにしている。
また、けっしてアジャイルがよくて従来な方法がダメということではない。しかし従来な方法だけでは合わなくなった(効率が悪い)ことは事実であろう。アジャイルは銀の弾丸ではないので効くことも効かないこともあるだろうが、弾丸を連射し続けて効果あるものだけを残していけばいいのではないだろうか。
藤原氏が実際にコーチをやっていると、まわりのチームがマネをし始めた。深刻な壁不足も発生した(まわりのチームがカンバンをはじめたため)。狙ってはいないとのことだが、これはもはや自然にスケールしたのであろう。小さな変化が大きい渦を作ったのである。
サービスづくりには、継続性とスタートアップが必要である。リリースで終わりではなく、そこからサービスと人の成長がスタートするのである。そしてそこにはリアルに反応して答え続ける臨場感が存在する。藤原氏が期待する未来は、この継続性とスタートアップによって開発を成功させ、それがビジネスを成功させ、世の中をびっくりさせることにある。彼のRockな挑戦は今後も続くのであろう。
※当日の発表スライドは公開されているのでぜひご覧ください。
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