体験で大きな気づきを得た2日間 – 「UXリサーチャー養成講座」参加レポート

レポーター:佐久間 純(2019/07/28執筆)

はじめに

2019年7月19日(金)~20日(土)の2日間、ウイングアーク1st株式会社にて開催された「【プロ直伝】UXリサーチャー養成講座 ~ ユーザー調査とユーザーテストの実践テクニックを2日間で!」に参加してきました。私のような一般参加者やウイングアーク1st社の社員さんも含め、参加者総勢40名を越える大盛況でした。

講師は『ユーザビリティエンジニアリング』『UXリサーチの道具箱』の著者でUXリサーチの第一人者である樽本徹也先生。
ユーザー調査とユーザーテストの実践テクニックを2日間で学べるということで、「聞く」だけでなく、講座の大半をワークショップで「体験」して学ぶ内容でした。概要を聞いた後は、すぐに手を動かして実践することができます。実際に体験できるので「これはこういうことだったんだ!」という発見ができるよい機会になりました。

以下に私が学んだことを書いていきます。

1日目「評価編」

ユーザー中心設計UCD(User Centered Design)の概念の講義から始まりました。ユーザー中心設計の概念における製品開発は、ユーザーの利用状況の「調査」、利用状況からニーズを探索する「分析」、ニーズを満たすような解決案を作成する「設計」、作成した解決案の「評価」、評価結果をフィードバックして解決案を「改善」、そして評価と改善を繰り返すことであり、1日目はこの中の「評価」を学びました。

2019/07/19 UXリサーチャー養成講座のようす

ユーザーテスト

評価方法の一つ、ユーザーテスト。これは私が最も受けたかったワークショップの一つです。
ユーザーテストの実施手順は以下の4つ。

  1. リクルート
  2. テスト設計
  3. 実査
  4. 分析

1. リクルート

被験者を集める手段はいろいろあり、調査会社への依頼、自社で募集をかけたり、人脈やSNSを使って募集するのも手です。
いずれにしても重要なのが「リクルート条件」。次のことに気をつけてリクルートします。

  • 代表的なユーザー
    • たとえば「20代女性」ではなく「トレンドに関心がある」といった性格的な条件にすることがポイント
  • 資格のあるユーザー
    • たとえば、カーナビのテストを行うときは運転免許証を持っていること、つまりそのタスクを実行できる人であること
    • 当たり前ですが、明記することが大事
  • 初心者お断り
    • ユーザーが困っている姿を見たい気持ちになりますが、設定したゴールまでたどり着けることが重要

ここでは、個人ワークとしてリクルートチラシを作成。内容は自由、講義で学んだことを踏まえ、パート募集チラシのような具合にイラストを入れながら募集要項を作成しました。
リクルートする側は、理想としているユーザーが来るだろうと思って作成しても、書き方を工夫しないと実際には上手くいかないとのこと。あまり条件を絞りすぎても集まらないし、条件を広げすぎても求めている結果は得られにくいのです。

2. テスト設計

ユーザーテストで重要な鍵となるのがテスト設計。テスト設計では被験者に与える作業課題(=タスク)を絞り込むことが重要。その上でシナリオ化していきました。

シナリオ作成のポイントは、ユースケースを決めてからシナリオを作ること。そうすることでタスク(=被験者のゴール)を見失わずにシナリオが書けます。

ここでは、iPhoneユーザーとAndroidユーザーとのグループに分かれ、任意のアプリについてテスト設計を行いました。私のグループは、フードトラック(移動販売車)を検索し日替わりメニューを見られるというアプリを取り上げ、「実際にどういう使い方をするか」や「使う人にとって欲しい機能はないか」などのユーザー視点で議論しました。タスクを設定してシナリオを作り、ひとまずテスト設計完了です。

3. 実査

テスト設計のワークショップで作ったタスクについて、樽本先生がインタビュアーとなり、参加者からリクルートした被験者がユーザーテストを行いました。被験者は「思考発話法」で思っていることをその場で発言してもらいながらアプリ操作を行います。被験者の行動だけではなく、考えや感情も見えてくるこの手法は実査では重要です。
黙りがちな被験者であっても、うまく言葉を引き出すことはインタビュアーの腕の見せ所なのです。

4. 分析

あるアプリを評価するために参加者から被験者を決め、樽本先生によるユーザーテストを行い、他の参加者は分析をするワークを行いました。被験者が「思考発話法」により発する言葉や行動を観察しながら、気がついた「事実」のみを記録していきます。そうして集めた事実を、効果問題、効率問題、満足度問題という3つの指標で振り分けてマッピングし、アプリの改善事項の優先順位を決めていきました。手順に従ってマッピングをしていくと、参加者からは「なるほど、そういうことね」「すごいこれは面白い」といった声が上がり、ワークショップで体験できたからこその効果だと感じました。

2日目「調査編」

ユーザー中心設計の概念、「調査」「分析」「設計」「評価」「改善」の中で一番始めに行う「調査」。ユーザーの現状を知るための調査であり、これなくして先には進めない工程です。さらに、調査結果を踏まえた方針をプロジェクトチーム内でアライン(=同じ方向を向く)するポイントも学べました。

ここでは、以下の手法をワークショップ形式で実践しました。

  1. ユーザーインタビュー
  2. ペルソナ
  3. ジャーニーマップ

この中でも特にユーザーインタビューは経験と技術が必要とされる手法で、ただ単にユーザーの話を聞くものではありません。ユーザーの発言の中に潜む思いをいかに導き出すかが重要であり、「ユーザーの声、聞くべからず」という樽本先生のお話は印象的でした。

2019/07/20 UXリサーチャー養成講座で作成したペルソナ

1. ユーザーインタビュー

まず「師匠と弟子」(コンテクチュアル・インクワイアリー)手法についての講義を受け、その後、ワークショップに入りました。「師匠と弟子ゲーム」と称したインタビューゲームです。
4名1テーブルになり、さらに2人のグループに分かれ、相手グループのシナリオをインタビューで探り合うというものです。相手グループのシナリオを探る弟子側はやはり難しく、シナリオの全体像がなかなかつかめないまま終了するグループが目立ちました。「意外と難しかった」「なにを聞けばいいのだろう」といった声も聞こえてきました。
その後、樽本先生からポイントの解説やアドバイスを受け再度ゲームをすると、目に見えて結果がよくなり歓声が上がっていました。実践的なコツやポイントを学ぶことができ、参加できてよかったと思いました。

2. ペルソナ

製品開発の現場でよく間違って認識されている考え方「すべてのお客様のために」。すべての要望を満たそうとすると、結局は誰も望まないものが出来てしまうし、そもそもすべての要望を満たすことはできません。ユーザー中心設計では「一人のユーザーのためにデザインする」という考えに基づいており、その手法の一つがペルソナです。

ペルソナを作るときのポイントは「架空(想像)」ではなく「仮想(仮に想定)」であること。つまり、調査結果から得られた事実から重要な要素を拾って作るのがペルソナであると学びました。
ここでは、グループでひとつのアプリを決め、そのアプリがどんなペルソナを基に作られたものかを探るというワーク(通常のペルソナ手法の手順とは逆)を行いました。グループ内では「このアプリの機能はこういうときに使うよね」とか「こういうシーンではこういう使い方するよね」などユーザーの体験やシーンを中心に議論し、ペルソナを作成しました。

ペルソナを作成するときは、

  • 性格や習性など出来るだけ詳しく書くこと
  • イメージに近いイラストを描くこと
  • それっぽい名前(ユーザーの性格を想起させる名前)にすること

などがポイントです。
ペルソナを作成後、グループ内では「こういう人いるよね」「こんな感じの人だったらきっとこういうこと言いそうだよね」など話が広がり、これがペルソナの効果なんだなと実感しました。

3. ジャーニーマップ

ペルソナに旅をさせるのがジャーニーマップ。
イメージとしては人生曲線の短いスパンのもの。ある製品やサービスにおけるユーザーの感情をグラフで表したもので、ユーザーの体験が見えてくる手法です。この手法の大事な点は、部署の垣根を越えてジャーニーマップを共有することです。そうすることで、社内全体が同じ方向を向く(アライン)ことができます。

ここでは「ビフォーアフターワークショップ」を行いました。生活を劇的に変えた製品を選び、ビフォー(過去)とアフター(現在)のジャーニーマップを作成するというもの。私のグループは、パーソナルファックス(過去)とLINE(現在)を比べました。過去と現在でアクションや感情が劇的に変わっていることを再発見でき、ジャーニーマップの効果が実感できました。また、ジャーニーマップを作ることで対話が生まれる、マップがあれば誰でも同じ説明が出来る(アラインする)といった大きな効果があることも体験できました。

まとめ

今回この養成講座を受けて、座学の学びはもちろんですが、ワークショップが大半を占めていたことで手を動かしながら考える体験型で学べたことがよかったと思います。

これまで本で読んだりセミナーで学んでも、実際に体験する機会がなく、頭の中では「こういうものでしょ」とわかっていても出来ないものがほとんどでした。今回のワークショップでは、この「頭ではわかっている」ものの体験が少しでも出来たことに価値があったと思います。実際にやってみると上手くいかないことやわからないことの発見に繋がりました。他のセミナーでは得られない貴重な体験が出来たと思います。

レポーター

佐久間 純

マスセット株式会社 プロダクトデザイナー
幼稚園、保育園向け製品のメーカーでプロダクトデザイナーとして就業中。
主に乳幼児用のおもちゃや椅子、園庭遊具などを担当。「モノづくりで幼保業界に変革を」をモットーに奮闘中。

【最近の活動】

  • 北海道胆振東部地震復旧ボランティア活動
  • Xデザイン学校2018年度ベーシックコース修了
  • おもちゃドクター養成講座修了
  • 保育コミュニティ#HUGにて保育士支援サービス開発中

趣味は DIY(家具作ってます!