セッション:[C-2] 10% Rule – Challenge to Making Innovative team – スピーカー:Taichi Watanabe |
■楽天トラベルの10%Ruleとは
渡邉さんが所属する楽天トラベル部門では、マネージャの佐藤さんを中心に「10%Rule」という取り組みを行なっています。
10%Ruleは、業務時間内の10%を使って、新しいサービスや機能の開発に自由に取り組んでよいというルールです。楽天トラベル部門では、この10%Ruleを活用し、新しいサービスや機能を作ってきました。
例えば、楽天トラベルのスマートフォンアプリ・キーワードサジェスト機能・ユーザーレビュー画面における自動リンク生成機能などです。
■10%Ruleの危機
エンジニアのモチベーションとサービスのクオリティを保つ役割を果たしていた10%Ruleでしたが、2010年の組織改編を境にモチベーションを保てなくなりました。
その結果、新しい機能やサービスにチャレンジするエンジニアは減っていき、クオリティだけではなく、個人個人のモチベーションも下がっていく負のスパイラルに陥ったのです。
そんな中、渡邉さんはアジャイルのトレーニングを受けるために、2011年に渡米します。トレーニングを終え、帰国した2012年の年頭、楽天トラベル部門で行われた10%Ruleのデモの発表会では、発表者は5人にまで落ち込んでいました。そこで、渡邉さんと佐藤マネージャは、新たな仲間と共に10%Ruleの復活に取り組みます。
■10%Rule復活のための2つの戦略
10%Ruleを復活させるために、次の2つの戦略をとりました。
- 10%Ruleで作られるプロダクトのクオリティを上げること。
- 新しいチャレンジャーをつくっていくこと。
プロダクトのクオリティを上げる
10%Ruleで作られるプロダクトのクオリティを上げるために、中間デモを行うようにしました。いわゆる学生症候群のように、デモの直前になってから慌てて仕上げる状況だったからです。
中間デモを行うようにしてから、10%Ruleに取り組むエンジニアのモチベーションと時間を保てるようになりました。
また、10%Ruleに取り組むエンジニア達とランチや合宿を行い、議論やアドバイスをし合える交流の場と、コーディングに集中できる環境を作るようにしました。
こうした取り組みの結果、10%Ruleにチャレンジするエンジニアが増えていきました。エンジニアが増えることで、ライバルとして互いに切磋琢磨していき、クオリティの向上にもつながりました。
新しいチャレンジャーをつくる
10%Ruleをより広めるため、新しいチャレンジャーをつくる試みを行いました。まず、取り組んだのは、デモの発表会を楽しくすることです。
- 発表会にお菓子を持ち込む。
- どのデモが一番よかったかを議論する。
- ドラとドラ娘を導入する。
こうした取り組みで、発表会をお祭りのようにしていったのです。
また、発表会開催の告知に社内SNSなどを利用して、より多くの社員が参加しやすい環境をつくりました。発表会で最優秀賞に選ばれたエンジニアには、トロフィーを贈りました。彼がトロフィーをデスクに置いてくれたおかげで、10%Ruleに参加したことのない社員が「このトロフィーは何?」と興味を持ち、10%Ruleがより広く知られるようになっていきました。
■夢は、10%Rule World Cupの開催
こうした取り組みの結果、20名を超えるエンジニアが10%Ruleに取り組むようになりました。
そんな中で行われた10%Ruleのふりかえりの席で、佐藤マネージャから「チーム戦をやりたいね」という提案が出ました。これをきっかけに、10%Ruleに取り組むエンジニアを2つのチームに編成してチーム対抗デモ発表会を行いました。
彼らは、楽天トラベル部門だけではなく、他の部門にも広め、活性化させようとしています。
そんな渡邉さんが掲げる夢は、楽天の全ての部門で10%Ruleが行われることです。楽天全体のChanpionを決め、他の企業のChampionと戦う。そしていつか、10%RuleのWorld Cupを開きたいと話していました。
■環境を前進させていく喜び
このセッションに参加した理由は、Googleの20%Ruleに近い話なのかなと興味を持ったことが、きっかけでした。実際に、楽天トラベルもGoogleも同様の取り組みでした。
よりチャレンジングな環境を作っていく中で、エンジニアのモチベーションとサービスのクオリティが上がっていき、仕事をする環境がより楽しくなっていく。そうやって環境を前進させていくのが、うれしいんだ。そんな渡邉さんの喜びが伝わってくるセッションでした。
(2012/10/25 編集注:スピーカーの渡邉さんより、発表資料のリンクをお知らせいただきました。渡邉さん、ありがとうございました)
公認レポーター 田野口 大樹