ミスターGT-Rが語る”人のためにモノをつくる”ということ:Agile Japan 2014 レポート (1)

Agile Japan 2014 基調講演


カルロス・ゴーンがフラッグシップ車開発のすべてを委ねた伝説の男、登壇

「日本一かっこいい男」と言われる白洲 次郎を彷彿とさせるダンディーな容貌と切れ味の鋭い語り口で、基調講演は幕を開けました。開始してものの数分で「これはアジャイルとかそういうレベルの話じゃないんじゃないか?」という気がしたのですが、その予感は的中しました。

講演中の水野和敏さん(Agile Japan 2014 基調講演)
講演中の水野和敏さん(Agile Japan 2014 基調講演)

ミスターGT-Rとは

講演レポートに入る前に、世間で語られている水野さん像をご紹介します。

  • 車に関わる仕事をしているならその名を知らない人がいない、伝説の天才エンジニア
  • 1990年から日産のカーレースチームの監督として数多くの国際レースで優勝
  • 2003年、カルロス・ゴーンに白羽の矢を立てられ、開発と販売の全権を委任されてGT-Rをわずか40名程度の人員と4年弱という短期間で開発(通常は7年ほどかかると言われる)
  • 昨年3月に41年間在籍した日産自動車を退社。
    インタビューや水野さんの公式HPでは、次の挑戦を示唆しており「2014年は今まで経験したことのない大きな変化と困難なチャレンジへのスタート年度になると思います」と語っている

水野和敏 名言」といったキーワードで検索すると、まとめサイトだらけというぐらい日本のみならず世界中のモーターファンがその動向を注目している方です。

Agile Japan事務局さん、
なんちゅうもんを聞かせてくれたんや……なんちゅうもんを……
美味しんぼの京極さんバリの感動です。

日本のモノづくりとは

企画、設計、開発、製造、販売、サービスなどといったバリューチェーンが分断されていないことが、日本のものづくりの強さの源泉。
日本人として根源の価値観が共有されているからこそ実現できる。

水野さん節、いきなりきました。
形だけのグローバリゼーションを否定し、日本のモノづくりに対する愛情が半端ではないです。それを30年、40年と第一線で実践してきたからこそ説得力があります。

後述しますが、本当のグローバリゼーションとはどうあるべきか、世界を相手に長く戦ってきたからこその確固とした結論を持っていました。

自動車業界における日本の位置づけ

80年台の日本車は世界に負けない強い独自性を有していたが、バブル崩壊後は、いつの間にか北米で売れるためのクルマづくりに姿勢が変わってしまった。”Made in Japan” から “Made for USA” にベクトルが変わってしまった。

今はやりの環境技術などは、それこそ昔は日本が断然世界をリードしていたのに、アメリカで売れるためにと重要度の低い付加価値に変わってしまい、いつの間にか欧州勢に追いぬかれてしまった。水野さんの目にはそう写っているようです。

レース監督という転機

講演中の水野和敏さん(Agile Japan 2014 基調講演)
講演中の水野和敏さん(Agile Japan 2014 基調講演)

初代プリメーラなどの名車を開発していたら、あるとき突然レース監督にさせられた、と水野さんが語るその経験では、非常に多くのことを学んだそうです。

世界一のメーカーとレーシングチームが単に組んでも勝利には直結しない。レースで大事なことは精度と効率、決してスピードではない。
同時にドライバーの本当の優秀さは、スピードではなく、プラスマイナス0.2秒の精度で周回できる正確さ。

レースとは当日に勝負するものではなく、(入念な準備も含めて)一年前には勝負がついている。

このあたりから開発や準備といった工程の重要さを、繰り返し説いていました。

「トライアル&エラー」と言えば聞こえはいいが、車の場合のエラーは人命に直結するのでバクチをやってはいけないとのこと。予測して安全だと確認できることしか実行しない。かと言って過去に戻ってはダメ。
と禅問答のような言葉がリズミカルに発せら、会場全体が「この熱気をもっと感じていたい」という雰囲気に包まれていました。

本当のグローバル化とは

このキーワードには特に水野さんの強い思い入れがあるように感じました。きっと社内でもたくさん戦ってきたのでしょう。

現地化による賃金格差を利用したコスト低減は、技術開発を止めてしまう。本来、技術の進歩はコストを下げるものであり、それを目指さない限り日本車の地盤沈下は止められない。
逆に現地化をきちんと使い分けている日本車メーカーは、高利益を上げている。

本当のグローバル化は、単なる賃金格差による現地化を超えたところにある。

同じ現地化と言っても、水が低きに流れるように賃金水準の低いところに生産を移管するのではなく、日本国内で日本人が取り組むのと同じように鍛えあげることが本当の強いグローバル化につながるという意見には、反対する要素はまったく見当たりません。

水野さんの今後の夢は

という質問を最後にしたところ、公にできるタイミングではないのか答えづらそうで、ぶしつけな質問をしてしまったと後悔しました。

それでも
「ファーストクラスや最高級フラッグシップカテゴリの車を作る。周辺国と日本が組んでEUのようなチームをつくり、ミドルクラスをどうおさえるかが重要」
とヒントを教えていただきました。
今後のご活躍を応援したいと思います。

水野さんに質問する執筆者(Agile Japan 2014 基調講演)
水野さんに質問する執筆者(Agile Japan 2014 基調講演)

最後に

定年を迎えてもまだまだ夢に突き進む、侍ジェントルマンの格好良さにしびれっぱなしの90分間でした。冒頭で書いた通り、アジャイルという枠にまったく収まらない水野さんの生きざまを凝縮した貴重なお話を伺うことができました。

徹頭徹尾強調していた顧客志向人のために働くという水野さんが企業人として貫いてきた哲学は、そのままアジャイルの顧客価値の最大化という考え方に当てはまります。時代がようやく水野さんに追いついた気がした瞬間でした。

参考資料

公認レポーター 柳川 純二

執筆レポート

http://www.manaslink.com/junji-yanagawa

 


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