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2010年09月4日に早稲田大学西早稲田キャンパスで「XP祭り2010~アジャイル学園祭」が開催されました。数あるイベントの中でも主催者、発表者、参加者の垣根が限りなく低いこのイベントの模様を、4名のレポーターの方に振り返っていただきました。

なお、本レポートEM ZERO Vol.6に掲載したものの完全版です。

納富隆裕さんのレポート

熱気に溢れた素晴らしいイベントでした!「XPだ、アジャイルだ」、一般社会の土曜日とは異なる時間と空間。私同様、初参加の人も多い中、語り合い、手を動かし、頷き、考え、歌い?踊り??笑いの絶えないイベントでした。俺も、私も「何かをやってやろう!」と強く感じた人が多かったと思います。勉強になった?いや、体の中から突き動かす何かを感じた“祭り”でした!

またスタッフはボランティアとのことでしたが、素晴らしい司会やフットワークの軽さを見るに、並のボランティアではありません。彼らの笑顔と働きで、より楽しめたことは間違いありません。感謝です。「何かやってやろう」と感じた一部の人が、来年のスタッフに名乗りを上げることでしょう。気が早いですが、来年も非常に楽しみです。

では、それぞれの講演やワークショップを紹介します。

眠い目をこすりながら、朝早く早稲田大学西早稲田キャンパスに向かいます。そう2010年9月4日土曜日は、XP祭り2010の開催日。twitterのTL(ハッシュタグ#xpjug)を眺めてみると、電車を乗り過ごす人、すでに遅刻を決めた人、朝から、いろんなテンションが入り混じっている様子です。
私は、公式レポーターの称号をいただいた身。汗を滲ませつつ、定刻前に何とかメイン会場に到着します。

「オープニング~XP入門」(小井土亨さん、福井厚さん)

席に着くと、早速、前説がスタート。小井土さん、福井さんお二人の掛け合いが始まります。いきなり「顧客がアジャイルが嫌いでね~」とか、「XP祭りは初めて?」といった客いじりから始まり、徐々に会場の空気が祭りの開始に向かいます。前説が延びて本題は10分遅れでスタート。ある意味、予想通りのユルさで、こちらもリラックスできました。スタートしてすぐ「(システム開発で大事なのは)最後は人!!」、せっかくの50ページあまりの資料も「ネットにあるから見てね」ときました。

入門と銘打ちつつ、概念等の説明はありませんでしたが、技術者中心の“祭り”です。逆に、司会お二人からの問いかけを聴きながら、参加者が質問について考える空気を感じました。頭を起こすにもよかったと思いますし、今日一日に気楽に臨めることがわかりました。

最後は、「最良(の目標)は、十分の敵」「人は変えられない。自分は変えられる」とお二人それぞれからお言葉があって、「今、いいこと言いましたね」「言いましたね」とお互いをほめあって「XP入門」は終了しました。

「招待講演~アジャイル×テスト開発プロセスを考える」(XPJUG関西 細谷泰夫さん)

 細谷さん

XPJUG関西の細谷さんは夜行バスでの東京入りとのこと、お疲れさまでした。話の主題は、“アジャイル”と“テスト”についてです。発表開始時「コンテキスト(の違い)を意識しましょう」との発言がありましたたが、この言葉は、“祭り”の間中、何度も意識することになりました。
人やコミュニケーションの問題は、結局、同じものを人それぞれが違って定義していることから発生することが多いです。コンテキストの違いが、“品質”など最終的なゴールの障害となることに、改めてこの日、気付かされました。

やはり品質の向上のために、“テスト”は欠かすことができません。今講演でキモだと感じたのは、以下のお言葉です。

「アジャイルは開発早期にテストと協調できる」
「イテレーション毎にテストの観点は進化していく。毎回のイテレーションで、テストモデルの向上を図ろう」

「みんなでアジャイルとテストについて、議論する機会を持ちましょう」という問いかけに、「そうだな、そうしよう」と思いつつ終了です。

「アジャイル開発の現在・過去・未来~今を知り、源流を訪ね、先を見据える」((株)チェンジビジョン 平鍋 健児さん)

 平鍋さん - コピー[1]

アジャイル界(というものがあるとしたら)の重鎮、平鍋さんの講演です。XPからカンバンまで、アジャイル開発の過去から現在までをリアルに知る人の言葉には、重みがありました。その中でも、「アジャイルは本を読むだけでは難しい」というフレーズは、最近の自分の実感に照らして、特に残りました。

また、非常に話の上手な方です。私も随分わかった気になって、「うんうん」と頷きながら聴くことができました。きっと重みもあり、かつ笑いも取れるこの話しぶりが、今日のこのイベントの熱気にもつながっているんじゃないかと感じました。

冒頭「今なぜアジャイルか?」の問いかけに対し、現状のシステム業界の問題や、これまで出てきた開発プロセスの違い、ワークスタイルにまで話がおよび、自分もいっぱしの技術者、管理者に変身した気になったところで講演が終了です。

コンテンツ祭り

講演、ワークショップ、グループワークの枠です。1時間の講演から、3時間の読書会まで、まさに“コンテンツ祭り”。ただコンテンツにより時間が異なるため、どうしてもコンテンツが重なり、こちらに参加すると、あちらに参加できない、というジレンマがありました。この時間帯が充実していた人が多かったようで、朝から晩まで1日の体力を考えると、実はちょうどよかったのではないかと思いました。

また、参加したくてもできなかったコンテンツがあったことで、来年への期待にもなったようです。スタッフが狙ったのか定かではありませんが、うまい構成になっていたように思います(いや、狙ってはなかったと思いますが…)。

以下、私が参加したものをご紹介します。

マインドマップで自分の頭を見える化しよう~アラサーIT 女子が脳の OS について解説【ワークショップ】(五十嵐順子さん)

 五十嵐さん

昼休みに他の参加者から、「講師の五十嵐さんは、よく話すおもしろい人だよ」と知らされ、参加することに。評判に間違いはありませんでした!!
マインドマップ自体、もちろん知ってはいるものの、残念ながら私は、あまり使っていません。けれど、マインドマップの必要性や便利さを、猛烈なトークと問いかけ、そして手を動かさせる進め方で、「自分も使ってみよう」と強く感じました。

概念や必要性の説明は、ときに冗長になる部分です。ところが、イメージワークとして、(画像を見ず)想像だけでキャラクターを描き、テーブルのメンバーと見せ合えば、ワイワイ楽しい雰囲気に変わります。

これからは、クリエイティブで、放射型の思考が求められる時代です。今後は、マインドマップを積極的に使うことを誓いつつ、最後は、用紙の真ん中に“HAPPY”を置いて、マインドマップを作成しました。文字どおり「HAPPY」に終了です。

プロジェクトに関わる全員の叡智を集めよう【グループワーク】(松本潤二さん with プロジェクト・ファシリテーター協会)

2時間のグループワークです。講師の松本さんのお話は、一度聞いてみたいと思っていました。参加者4名程度が、1テーブルに座り、グループワークがスタートです。

流れは以下のとおりです。

  1. テーブル毎に自己紹介する。
  2. プロジェクトで起きている問題をテーブル毎に出し合う。
  3. 各テーブルが発表を行い、その後講師を中心に問題を分類する。
  4. 問題の種類毎にテーブルのメンバーを移動し、新たなテーブルメンバーと問題の本質は何か検討する。
  5. (否定的な意見は出さず)問題の解決策を検討する。

特に珍しい形式ではないように見えますが、しっかり時間内に本質的な問題らしいものが出てきて、具体的な解決策まで出せてしまう充実感の大きいグループワークでした。

きっと、ときどき与えてもらったヒントだけではなく、参加者が気付かないところで、ファシリテーション的な仕掛けが多くあったのでしょう。あとで思い出すことの多い2時間でした。

最後は、全員が椅子を輪に並べて向き合い、参加者の具体的な悩みに、松本さんがファシリテーションの具体的なアプローチを出しながら答えてくれるというおまけつきでした。しっかり考える時間になったように思います。

Agile Conference 2010報告(アジャイラーズ・オブ・カリビアン)

米オーランド、ディズニー直営のホテルで5日間行われたイベントに参加した3名の報告会です。三者三様のキャラクターと三者三様の参加理由がありましたが、3名とも「行ってよかった」「また参加したい」という感想を持ったそうです。かなりエネルギーに溢れたイベントだったようです。コミュニケーションは何とかなったようですが、楽ではなかった様子。このご時勢、英語はやらないとダメでしょうか。聞いて驚いたのは、3名の発表者のうち、1人が学生だったことです。

 募金

来年以降も毎年、“Agile Conference”に学生を送り込む予定だそうです。今後のシステム業界のささやかなムーブメントに期待しつつ、私もわずかながら募金に協力しました。

日本人の発表者がいなかったのは残念だったとの言葉もありましたが、きっとオーランドの熱気が日本に届き、発表者も必ず出てくると思います。そのときは、英語でコミュニケーションができるようになっていて、一緒に行けたらいいなと感じました。

AsianPLoP関連の紹介(鷲崎弘宜さん、本橋正成さん)

こちらは、今度日本で開催されるイベントの紹介です(http://patterns-wg.fuka.info.waseda.ac.jp/asianplop/japanese.html)。世界各国に発信地があるのに、「アジアに、そして日本にないのは非常に残念」と、イベント開催に至ったとのことです。

また、イベントの中心概念“パターン”については、「アジャイルの源流はパターンにあり」ということで、午前中の平鍋さんとは違ったアジャイルへのアプローチのお話もあって、やはりみなさん熱いなあと感じながら、興味あるイベントの一つとしてフラグを立てました。

LT祭り

11人の猛者達による“LT祭り”です。LTはライトニングトークスという短時間のプレゼンです。今回の持ち時間は5分(しかも容赦なく終了します)。各自、概念を集約したものや新しい技術の紹介、システム開発への思いや事件を語ります。長いイベントの終盤で、正直、脳の疲労もピークの状態でしたが、その疲労を吹き飛ばす素晴らしい時間帯でした!

「初LTです」という女性が、某ロボットアニメのプラモデルと開発の類似性について話して会場の笑いをさそえば、ある発表者はコミュニケーションの重要性とカポエラについて話し、実演まで行います。またある人は、某キャラクターのアーケードゲームをモデリングし、さらにある人は、日本でまだ数人しか携わっていない技術の紹介をします。マインドマップを使い、淡々と、しかし笑いはしっかり取る人もいれば、素晴らしい間とテンポと絵、語り口で、会場の熱気を最高潮に高める人もいました。

大きな熱気とそれ以上に大きな笑いで、1日の疲れが吹っ飛んだ1時間でした。

基調LT、クロージング(XPJUG実行委員長 渋川よしきさん)

 渋川さん

トリを飾るのは、渋川さんによる「LTのつくり方」です。今、まさに熱いLTを聴いて、感じたばかり。「私もつくる!」「俺はもっといいLTにする」と感じた人達も多かったはずです。

いくつか教えていただいた「つくり方」を抜き出すと、

・客層を考える
→内輪ネタも大事
→しかし、一部だけのウケを狙うのはNG。
・あなたが一番になれる題材を選ぶ
→例えば“コミュニケーション”だけでは、一番になることは難しい
→掛け算することで、あなたも一番になれる(アニメのキャラクターと“コミュニケーション”なら、可能かもしれない)
・笑いはやっぱり大事
・LT初心者ネタは無敵(ただし3回が限度?)

ネタの掛け算の話は、先のLT祭りの例もあって、頷く人が多かったようです。

「LTのつくり方」に続いて、「XPJUGの歴史」について、渋川さんの見てきたこと、感じてきたことが話されました。今のスタッフ、発表者、それぞれの熱い、またやらねばという意思は、一日参加してみて強く感じました。しかしそれは、その人ひとりだけのパワーではなく、これまで参加してきた人達が作ってきたものであることを渋川さんの話を聞いて理解できたように思います。

最後の最後は、協賛の各団体からの提供による本のプレゼント大会です。最後まで、“祭り”のノリを残すあたり、やはり、スタッフは只者ではありません。

大盛り上がりのイベントもこれで終了。しかし“祭り”あとの静けさもなく、次の懇親会へみなさんの気持ちが向かっていたようでした。

懇親会、そして懇親会が終わっても熱気は冷めませんでした。熱い熱い一日が終わりましたが、来年の“祭り”に向け、そして、明日の自分の現場を楽しくするため、心を新たにした一日でした。2011年9月の土曜日、2度目の参加となる私と、一緒に“祭り”に参加しませんか?