「アジャイルのあるとき、ないとき」 〜アジャイルは関西ビジネスをどう変えられたのか?そしてこれからどこに向かうのか?〜

久保 明氏、土屋 秀光氏、西 丈善氏、平鍋 健児氏、山根 英次氏、西河 誠氏、
その他Agile Japan2012実行委員など多数
セッション詳細


 

■アジャイルのあるとき、ないとき


関西人なら、このセッションのタイトルを見た瞬間、セッションの趣旨が理解いただけると思いますが、そうではない全国の方に簡単に説明しておきたいと思います。
タイトルの「あるとき、ないとき」は関西ローカルのCM「551の蓬莱」が由来になっています。
551の蓬莱の肉まんが「ないとき」は、家族全員が落ち込んで、暗い雰囲気なのですが、「あるとき」は家族全員が明るく喜んでいる様子がわかりやすく切り替わるのがそのCMの特徴です。(周りの関西人に聞いてみましょう!)

本セッションでは、551の蓬莱のお土産のように、アジャイルが「あるとき」と「ないとき」で、パネリストやセッション参加者の開発現場がどのように変わったかを中心にディスカッションが進められました。

 

■「ないとき」から「あるとき」へ


本セッションのパネリストは、アジャイルソフトウェア開発宣言から10年、日本、特に関西でアジャイルソフトウェア開発を実践されてきた方々です。

まず、コーディネーターの西河氏(AgileJapan2012実行委員長)から、質問が投げかけられました。
「アジャイルがないときはどんな状態でしたか?また、あるときは、どんな効果がありましたか?」

この質問に対し、西氏、久保氏は、ふりかえりやタスクボードを自らが率先して現場に導入。やってみると楽しい、現場も成長していることが感じられたと、その変化を説明しました。
土屋氏は、タスクボード、ペアプロを通じて、チームのコミュニケーションの場を作ることに取り組み、各担当者がお互いの残タスクを協力して進めるようになったという経験談を語りました。また、土屋氏は開発者にとどまらず、テスト部隊にもXPのプラクティスを適用し、効果を見出したことも紹介しました。XPのプラクティスは開発者だけのものではない。土屋氏のこのお話が、平鍋氏の「プロジェクトファシリテーション」提唱のきっかけになったそうです。
山根氏からは自身の変化についてのお話が印象的でした。アジャイルに取り組む前からコミュニケーションスキルの高い人もいるが、山根氏はどちらかというと消極的なタイプだったそうです。アジャイルには技術面からのアプローチを行うことで、自分のスタイルを作ってきた、やりたいことを学ぶ場に自ら踏み込むことで、仕事を拡げていったそうです。

 

■アジャイルを阻害するものは?


アジャイルの実践は、人のやりかたをそのまま持ってくるだけではうまくいきません。自分の現場にあわせて、どう取り組むかを考えるのが大切という議論が行われたあと、どうやったら「あるとき」になれるのか、パネリスト以外のセッション参加者も巻き込んでディスカッションが行われました。

会場からも、「上司・顧客を巻き込むには?」などの課題が提起されました。質問者の現場の状況や、同じ悩みを持つ人の意見を聞いたりして、全員が一緒に考える雰囲気になりました。共通のキーワードとして出てきたのは、ツールやルールにとらわれて「思考停止」していないかという参加者全員への問いかけでした。
考えることで現場は変えられるのではないか、と思いました。

 

■アジャイルの背景には技術がある


開発者は顧客価値を最大限にするためにアジャイルに取り組みます。
顧客の要望を柔軟に実現するには、技術力が必要という意見が出ました。アジャイルプロセスの実践の土台には、明確な「技術」があることが、パネリストの共通認識でした。

顧客からの要望、開発者からの技術的アプローチがあり、価値は最大化されます。プログラマに考えるきっかけを与えたのがアジャイル実践の効果と、西河氏はまとめました。

 

■アジャイルのあるときへ


セッションの最後に、参加者の女性から次のような発言がありました。
『私にとって、XPの白本は憧れでした。でも、あれを自分の仕事でやれる気がしなかった。でも、あるとき、友人と自分がやりたいソフトウェアを作る機会があった。プログラミングが楽しかった。そのとき、はじめて、XPやれる、と思った。アジャイルやれない、と思っている人は、プログラミングが楽しい、という経験をするといいのじゃないか。』

それぞれ現場や開発は違っても、個人やチームで考えることで、みなさん自身のアジャイルを見つけられるのではないでしょうか。

 


公認レポーター:石前 あき
(早版をベースに加筆修正した正式版レポートです。)