「DEEP AGILE PEOPLE」
 ~本には書かれていない、アジャイル開発の本気の討論会~

牛尾 剛氏、川端 光義氏、原田 騎郎氏、細谷 泰夫氏、森崎 修司氏
セッション詳細


 

日本のアジャイル会を牽引してきた三氏が部屋の真ん中で輪になって居酒屋で話をするという設定で、ディスカッション的トークを繰り広げるという、これまでにはない形式でのプログラムでした。

牛尾氏:

「昔アリスター(アリスター・コーバーン)と話をしていた際に、アジリティは虎だと。インテリシェンス&クイックだと言っていたんですよ。チーターは猛スピードで走るけど動きは直線的で、虎はこまめに力強く方向を変えていく。要は細かく変化に対応ができることだと思うんですよね。そして、変化に追従することが大事なのであって、アジャイルはソフトウェアを作る際の道具箱のひとつだと思っています。
最初にアジャイルを導入しようなんて考えていなくて、解決したい課題があってそれを解決するために、道具箱の道具を使うイメージです。課題を解決するためにドキュメントが必要だということもあります。」

 

川端氏:

「でも、虎のように素早く力強く動くのは大変ですよね。

そして大半のプログラマって素早く動けない、つまり、腕がいいプログラマほど保守的ですよね。保守的だからこそ、様々なケースを考えて例外にも対処して堅牢なシステムを作れる。
だから、素早く動けるように、時間をかけてチームの成長を待つより、インセンティブをかけたりして、リーダーシップを発揮してひっぱっていくほうがいいと思っている。
それは欧米人のように個々人のアイデンティティが確立しているところと、日本人に多い『指示待ち』というところと大きな差があると思っています。」

 

原田氏:

「かつて『Agile』と命名されるまでに紆余曲折ありましたが、私がしっくりきていないのが『アジャイル = 速い』というメタファです。
別に速くなくてもいいと思うんですよね。その状況に応じた『臨機応変』ということであればそれでいいと思うんですよ。造船業のように鉄板1つを溶接するのに一週間かかるものもあれば、半導体のようにミリ秒で1個できるものもある。要は相手の速度に対応できるように、その2倍の速さがこちらにあればいい。

私は出自が化学屋なのですが、やりたいことが分かっていてそれを作るのは『マニュファクチュアリング』なのであって、やったことのない一回きりだからこそ『プロジェクト』というわけであって、新しいものを作るのだから、結果をみてフィードバックをかけてうまくいっているか『味見』をしながら進めていくのは、化学プロセスを学んだ身からすると、当たり前のことだと思っています。それがようやくソフトウェアの世界にも広がってきたのだなという実感をもっています。
アジャイルって、本当はそう言わなくてもいい、普通にあることだと思っています。」

 

三氏ともに、よく言われるプラクティスやフレームワークといったものには全くこだわることなく、その時の状況や相手、チームにあわせて臨機応変に対処されているというお話が印象的でした。


公認レポーター:佐藤 嘉亮
(早版はスピードを重視した版です。内容の充実度よりもいち早く発信することを優先しています。)