「アジャイル開発 基本のキ」

西村 直人氏
セッション詳細


 

このワークショップは、西村氏が現場にアジャイルを導入する際によく最初に行っているそうです。講演とゲームでの体験を通して、アジャイル開発の基本的な考え方を学びました。
ワークショップを通じた体験型セッションということで、参加したみなさんそれぞれの気づきがあったと思いますが、本レポートでは私が興味を持った部分を中心にご紹介したいと思います。

 

■アジャイル開発はこれまでの開発とどう違うのか?


モノをつくるという観点で、これまでの開発のやり方とアジャイル開発のやり方を比較すると、フェーズの呼び方や活動が違っているものの、実は、やらなければならないことは同じです。
これまでのやり方は、ゴールまで一直線に進もうとし、的を狙って撃つようなものなので、開発に着手する前に必要なことをどう実現するかをきちんと準備しておくことが重要になります。ただ、たとえば「10年後も持つシステムを作ってください」というように的が遠い場合であったり、「開発チームのめどが立たない」「競合製品が出てプレッシャーが強い」など大荒れだったり、「プロジェクトが短納期」など高速だったりというとき、的を外さないようにするのは困難です。
的が外れるとはどういうことかというと、リリースに間に合わない、使いづらいものができてしまったなど、顧客にとって価値のないものに時間と労力が使われてしまうことです。
一方のアジャイル開発ですが、狙って撃つのは変わりません。ただし、まず近くを狙い、確実に当て、当たってから方向をもう一度確認します。ジグザグに進むイメージです。ゴールまでは必要になるものから順番に確実に準備し、出来上がったものを確認していきます。大切なことは、顧客の期待に応えられる成果をくりかえし出して確認することです。キーワードは「顧客価値」です。

顧客価値とは何か?急に質問されると答えに窮するかもしれませんが、「自分がお金を払う立場としたら?」とお客さんの立場で考えると大切なことが見えてきます。

頻繁に価値を届けようとすると仕事の進め方自体が変化します。変化するとはどういうことなのか?やってみましょう!ということで、トランプを使ったゲームが始まりました。このゲームは実際のプロジェクトをモデル化したもので、グループ内で一人プロダクトオーナーを決め、あとの人は開発者となり、要求を聞いて成果物を届ける作業を行います。

準備が整ったところで、プロダクトオーナーだけ集められてこのゲームの真のゴールが教えられました。そして、ゲームが開始され、リリースが完了して1回目が終了しました。
1回目のゲームの確認作業(品質チェック)を行い、開発者にも真のゴールが伝えられました。と、ここで「もう一回やるとしたらどうすれば上手くいくか?」話し合う時間がとられました。グループで出た意見を全体で共有した後、じゃあ本当に上手くいくか試してみましょう!と、2回目のゲームをして、その後確認作業を行いました。どのグループも1回目より上手くできていました。

さて、1回目と2回目で一番変わったことは何でしょうか。それは、自分たちで仕事の進め方を変更したことです。確認するのは成果物だけではなく、仕事の進め方も絶えず見直さなければなりません。そのための仕掛けが必要です。キーワードは「透明性」、「検査」、「適応」であり、その支えになるのはコミュニケーションです。先ほどのゲームでも2回目の方が1回目より会話の量が増えていました。

 

■アジャイル開発はどう進むのか?


ゲームの後、実際の開発の進み方が説明されたのですが、ゲームで体験したことと照らし合わせながらだったので、参加者のみなさんはとても府に落ちている様子でした。

 

■明日から始めよう


アジャイル開発のプラクティスがたくさん紹介されたのですが、全部いっぺんにやるのは大変なので、現場に応じてまずひとつやってみるのはどうでしょうかと提案されました。ピンポイントで始めてみて、少しずつ良くすることを続けていってほしいとおっしゃっていました。

 

■質疑応答


最後に質疑応答の時間がありました。いくつか質問が出たのですが、その中で特に印象に残ったのは、アジャイル導入で留意すべき点についての西村氏からのアドバイスです。

  • 取り組む人間を少なくする。
    (一プロジェクトからであったり、一チームからであったり)
  • 助走期間として部分的に始める。
  • まずやりたい人を集めて前向きなチームをつくる。
  • 慣れてきてから、広げていく。

 

■おわりに


私は部屋の一番後ろの方からワークショップの様子を見ていたのですが、みなさんがすごく楽しそうに取り組まれていて、「私もチームに入りたい!」と感じました。アジャイルな開発現場は、周りの人も引きこむ魅力があるのかもしれません。


公認レポーター:石前 あき
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