幸せに働く、幸せな組織への道:SGT2013レポート(1)

2013年1月15日〜16日にかけて開催されたScrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013(SGT2013)。豪華なゲスト、充実したプログラム、多くの参加者で盛況のうちに幕を閉じました。Manaslink公認レポーターがその一幕をお伝えします。
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■SGT2013 Keynote by Jurgen Appelo

2013年1月15日、スクラムギャザリング東京2013キーノートはこの人、ユルゲン・アペロさんです。『How to Change the World』 の著者、といえばご存知の方もいらっしゃるかもしれません。この複雑な社会を変える、ということを続けている偉大な思想家にしてアジャイル実践者です。

さあ、彼と一緒に仕事を変える方法を考えてみましょう。

SGT2013 Keynote by Jurgen Appelo
Photo:Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013実行委員会

■あなたの仕事は幸せですか?

嫌いな仕事を続ける不幸

キーノートは、幸せに働くためにはどうしたらよいのだろう、という問いから始まりました。

想像してみてください。あなたの同僚、メリーさんです。
彼女はいつもすてきな笑顔で、周りを明るくします。仕事もできる。でも、実は彼女は不幸なのです。なぜって、彼女は仕事が嫌いだから。

世界の半分の人は、自分の仕事が嫌いだといいます(私の仲間に聞いたところ、半分より多いんじゃないか、と言ってましたが)。
ここはそういう世界なのです。仕事は嫌い、けれど辞めることもできない。生きるためにお金が必要だから。メリーは笑顔の裏で、嫌いな仕事を続けなければなりません。

でも、それじゃいけない!世界を変えなければならないのです。
でもどんな風に?

組織とはなにか?

そこで組織論です。

仕事は組織で実行するものだし、ほとんどの人は組織で働いています。仕事のやり方を作っているこのシステムは一体、何なのでしょうか。
これこそ組織論、つまり組織とは何であるか、という問題です。

さて、ある人は次のように考えました。組織は機械と同じだ、と。
幸せになるには、仕事を効率よく行えばいい。効率よくするために、難しいことは考えずに自分の仕事に集中しなさい。
仕事をどんどん分業しよう。切り離されたそれぞれの仕事に集中して、他の人を邪魔しないようにすればよい。

またある人は次のように考えました。組織はチームスポーツみたいなものだ、と。
勝利のために、自分を捧げるんだ。作戦のために、身を捧げるんだ。

■複雑さが加速するこの世界

さて、どうでしょうか。上のような考え方は正しいでしょうか?
果たして人は、分業された組織の中の歯車になって、幸せになれるでしょうか。あるいは、誰かの決めた作戦に従って、幸せになれるでしょうか。

残念ながら複雑さが加速するこの世界では、一つの作戦がどこでも、あるいはいつまでも通用するものではありません。すべての戦略の70%が失敗する、という統計もあります。

そして、世界はさらに複雑さを増しています。多様化、国際化、イノベーションの加速。価値観もどんどん変化していきます。このように複雑さが加速する世界では、刻々と変化するそのありさまを学習し、適応していく健全な組織が必要なのです。

組織はコミュニティ

だから、ある人は次のように考えました。組織はコミュニティだ、と。
コミュニティの利益になる限り、好きなようにやりなさい。

こうして、さまざまなアイデア、やり方が生まれました。スクラム、カンバン、脱予算経営リーンスタートアップなどなど。自己組織化された、学習する健全な組織です。

ひとつひとつの障壁に答え続ける

よしきた。さあ、組織を変えていきましょう……と言いたいところですが、組織をコミュニティに変えるにはたくさんの障壁があります。

組織の文化を変えるのは容易ではありません。変化には抵抗がつきものです。コミュニティ指向は、管理を手放すようにも見えます。マネージャーの反発もあるでしょう。マネジメントの必要性はこの後で説かれるのですが、実はマネージャーが必要とは限らないのです。

これらの障壁に確実な答はない、とユルゲンさんは言います。複雑さの加速する世界では、次々と出現する新たな問いに答えることそのものが仕事なのです。

新たな問いに答えるヒントとしてユルゲンさんが挙げたのは、2つのキーワードです。

ここでスクラムの源流である、野中 郁次郎先生の知識創造経営を加えなければなりません。2日めの特別講演だったのですから。これについては、また後で触れます。

■マネジメント3.0

ここからは、ユルゲンさんによる組織を形作るマネジメントの訓練です。

健全な組織の実現のためには、マネジメントがカギとなります。スクラムを知っていれば、すぐ思いつくかもしれませんが、マネジメントというものは、マネージャーでなければできないことはありません。ユルゲンさんの言葉によれば

マネジメントは、マネージャーたちに任せるには重要すぎる。
自分たちも参加すべきだ。

となります。

われわれのマネジメント3.0訓練メニューは次の6つです。
詳細は原田さんがまとめているので、ここでは要点のみ挙げるとしましょう。

1. 人々を活性化させる

言うまでもなく、組織は人によって成り立っています。組織の最も重要な構成要素、それが人です。彼らの活力、創造性、モチベーションを高く保つために、マネージャーはあらゆることをします。

2. チームに権限を与える

チームは自己組織化することができます。が、そのためには権限委譲、委任、そして信頼が必要です。
権限委譲のやり方は、完全委任や結果相談のみ、あるいは判断について相談する、などさまざまです。すべてを委譲することが正解ではありません。

3. 制約を整える

自己組織化すればチームは何にでもなれますが、大失敗もできます。そのため、人々とリソースを保護し、明確な目的やゴールを示す必要があります。

4. 能力を高める

チームに十分な能力がなければ目的達成はできません。メンバーの能力を高めることが必要です。

5. 構造を育てる

複雑な組織では、複雑なコンテキストが生まれ、チームはそれに翻弄されることになります。そのため、コミュニケーションを促進する構造、組織構造を横断するグループが必要です。

6. すべてを改善する

人々、チーム、組織は継続的に改善を続け、できるかぎり失敗を避け続けなければなりません。

■マネジメントの理想型へ

優れたマネジメントはリーダーシップを包含する

優れたマネジメントはリーダーシップを包含するものだと、ユルゲンさんは言います。

リーダーシップとは、新しい事を始めて仲間を導く力です。
一方、マネジメントは統制を行います。統制とは、ルールを定めて遵守することです。しかし世界を変えるためには、統制を少し手放してリーダーシップを発揮しなければならないときもあるでしょう。
リーダーシップとマネジメント、これらを共に自分たちで行うのが理想なのです。

フロネティックリーダーシップとマネジメントの交差するところ

ここで話は、2日めの野中先生につながります。
野中先生は、不確実な世界で必要とされるリーダーシップについてお話しました。それはフロネティック(賢慮、実践知)のリーダーシップです。

不確実な世界でのイノベーションには、実践知、つまり、いまそこにある現実に対応する最善の判断を下すリーダーシップが必要なのです。
このフロネティックリーダーシップとマネジメントの交差するところ、不確実な世界に生きる道、それこそが、スクラムギャザリング東京2013のハイライトであり、われわれの時代精神とも呼べるのではないでしょうか。

■組織を変える、世界を変える第一歩

話をユルゲンさんのキーノートに戻しましょう。

組織を変えるのは大変ですね。私も日々悩んでいます。
変化に抵抗はつきものですし、下手なことをして効率や利益を損ないたくないという経営者の考えも分かります。

ユルゲンさんは言います。

プラクティスを盗みましょう。
実験は安全なところで、小さく開始しましょう。
そしてそれらを現場に適応していきましょう。

そう「メリーが本当の笑顔になるその日まで」と。

幸せに働く組織への変化の流れは、覆せないものだと思います。
なぜなら、みんなが望んでいるから。幸せに働くことに反対する人なんて、いないでしょう。そして、みんなが幸せに働くことができて、しかも、組織がより大きな利益をあげることができるとしたら、どうでしょうか。

もちろんこんな理想の実現は、簡単ではないし、すぐ手に入るものでもない。しかし2日めの野中先生の言葉を借りれば、これは紛れもなくCommon Good(共通善)、人類共通の普遍的な理想です。

世界の半分の人が仕事を嫌いだという統計を信じるのなら、世界の半分の人を救うチャレンジにつながる理想のゴールです。であれば、これも野中先生の言葉ですが、本当の出発点は情熱勇気、この2つです。

やり方は何でもいい、情熱と勇気を奮い立たせて行動に移す。まずはそこからなのです。

公認レポーター 柴田 昌洋


もっと知りたい

Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013

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Jurgen Appeloさん

野中 郁次郎先生

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