東京「リーンスタートアップ 新規事業を成功させる4つのステップ」 – Agile Japan 2012レポート(40)

「リーンスタートアップ 新規事業を成功させる4つのステ​ップ」


 

AgileJapan2012東京サテライトWorkshop1では、Lean Startup Japan 和波さんより、「リーンスタートアップ 新規事業を成功させる4つのステップ」というテーマで講演とWorkshopを行なっていただきました。

本講演における最も大きなポイントは、「どうやって事業を始めるか」という点です。システムを作る、ではなく、事業を始める、というのが重要です。

 

■「リーンスタートアップ」について


リーンスタートアップは、既存のスタートアップにおける無駄を無くし、効率的にスタートアップを成功させるための手法です。現在、リーンスタートアップはアメリカで主流となっているアントレプレナー術であり、日本においても注目を集めています。

講演者の和波さんは、以前からリーンスタートアップの考え方に共感し、2010年より”Lean Startup Japan”を設立、日本におけるリーンスタートアップの普及を目指してきました。

「リーンスタートアップ」という言葉は、IMVUのCTOだったEric Riesが作りました。実は、他の名前の候補として「アジャイルスタートアップ」というものがあったくらい、リーンスタートアップとアジャイルは親和性の高いものです。

リーンスタートアップは、元々はトヨタの「かんばん方式」を基に作られた「リーン生産方式」に由来するものです。リーン生産方式は、製品製造工程における様々な無駄を体系的に排除する生産管理手法ですが、これは既に1あるものを100に育てることを目的としていると考えられます。それに対してリーンスタートアップは、0から1を作る工程における無駄の排除を目指しています。

 

■リーンスタートアップの特徴


リーンスタートアップの特徴として、大きく2つ挙げることができます。

一つは、「資金投入前に市場のニーズを確認すること」です。
既存のスタートアップには、計画時点で想定した市場のニーズが本当に存在するかを検証して学習するまでに、多大な時間と資本金を浪費してしまう、という問題がありました。事前に学習ができていれば、そのような出費はないはずなので、この多大な時間と資本金の浪費は「無駄なもの」と見なされます。
リーンスタートアップは、計画時点における想定を全て「仮説」であるとして、多大なコストを支払う前に検証を行います。

もう一つは、「構築・測定・学習を繰り返しながらアジャイルに開発すること」です。
リーンスタートアップの重要な考え方として、BML(Build-Measure-Learn)フィードバックループというものがあります。これは、構築・測定から市場のニーズを学習し、それを基にしたアイディアからまた構築・測定を行う、というサイクルを回すことで、市場のニーズに確実にリーチしようとするものです。
開発チームにおける進捗の指標は「動作するプログラム」ですが、スタートアップにおいては、それ自体が「無駄」になる可能性があります。ニーズの無い機能は無駄であり、またコードは保守が必要な「負債」であると考えられるためです。よって、常に学習を繰り返し、そうした無駄を減らすことを目指すべきと考えられています。

 

■リーンスタートアップのプロセス


どんな製品でも、初めはマーケットのほとんどの人が無関心な状態です。
例えば、小さな素晴らしいSNSを作ったとしても、大多数の人にとっては、FacebookやMixiのようなマスのマーケットに隠れて全く目立たず記憶にも残りません。しかし、課題を抱えたユーザーは常に解決手段を探しています。そのようなユーザーに対して、心に響く解決方法を提示することで、彼らを熱狂するファン、コアユーザーにすることができるかもしれない、と考えます。

重要なことは、自分たちの製品にガッチリ合ったコアユーザーを見つけ出すことです。自分たちのコアユーザーは何を熱望して、あるいは何を望んでいないか。常に測定し、需要を明確にし、すぐに製品に反映させていく必要があります。そのために、コアユーザーの像をはっきりさせ、彼らにインタビューし、解決を絞り込んでいくことが重要です。

一般的に、スタートアップがアイデアをビジネスにしていく時は、
アイデア→製品→ビジネス
というプロセスで市場にリーチしようとしますが、大半のスタートアップは、製品からビジネスに行く前に失敗してしまいます。スタートアップにおいては、ここが最も難しいポイントだと言われています。

成功事例として、iPodのビジネスが挙げられました。
iPodの機能を説明すると、「HDDで大容量保持できるオーディオプレーヤー」となります。しかし、AppleはiPodの売り文句として、
“1000 Songs in your pocket!!(1000曲があなたのポケットの中に!)”
という魅力的な文を作りました。
もしこれが、「mp3という音質の劣るが圧縮率の良いデータをHDDに入れて……」などの説明文だと、ユーザーの心には響かないと考えられます。Appleは「CDを大量に持ち歩くようなライフスタイルを変えたい」ユーザを見出し、そこに適切に売り出した結果、大成功を収めることができました。

 

■グループで「仮説」を作る


講演はここまでで、以降は、参加者でグループを組み、Workshopを行いました。

Workshopの手順は、まず初めに、特定のIT技術を決め、それ基にを製品化・サービス化することを考えます。そして最後には、その製品が「誰の」「何の」課題を解決するかを発表します。ここで考える解決は、リーンスタートアップでは「仮説」と言います。

発表のスタイルは「エレベーターピッチ」と呼ばれるものです。これは、短期間で製品の良さ・特徴を知ってもらうために、『30秒』という短い時間で説明し切るというものです。エレベーターピッチには便利なテンプレートがあります。

[潜在的なニーズを満たしたり、抱えている課題を解決したり]したい、
[対象ユーザ]向けの
[プロダクト名]という製品は
[プロダクトが属するカテゴリー名]です。
これは[重要な利点]ができ、
[代替手段の最右翼]とは違い、
[差別化の決定的な特徴]が備わっている

今回のWorkshopでも、上記のテンプレートを埋める形で「仮説」の作成に取り組みました。そして、Workshop最後の発表に対して参加者は1票ずつ投票をして、最優秀発表を決めることになります。

最優秀発表は、音声技術をテーマとしたグループの発表になりました。
「合唱などで自分のお子様の声だけ録音したい、お子様を持つ親御さん向けの、音声認識ビデオカメラ」
という製品です。エレベーターピッチにおいて重要なことは、その製品を使っている人の姿が明確に想像できるということです。この発表は、利用者の利用シーンが明確に想像することができる大変素晴らしいエレベーターピッチでした。

リーンスタートアップでは、「仮説」に対し、実際にユーザに対して「検証」を行うことで、実際にニーズが存在することを確認します。「仮説」設定と「検証」を繰り返し行うことで、解決方法が絞りこまれ、コアユーザー像が明確になり、より精錬されたサービスを作ることができるようになります。

 

■リーンスタートアップ挑戦者に向けて


最後に、今年の夏以降、腕に自信のある人を対象に、以下のような条件でリーンスタートアップに挑戦の機会を設けることを考えているそうです。

  • ソーシャル機能は禁止
  • メモ帳やカレンダー等、既にニーズのあることが分かってるスマホアプリ
  • 有料で販売すること
  • スタート時に法人登記すること
  • 3ヶ月で強制解散すること
  • 3ヶ月間で得た収入は「全額」挑戦者が取得できる
  • 3ヶ月間の衣食住は保証する

腕に自信のある方は、是非これを機に挑戦してみてください。

 


東京サテライト公認レポーター:泉森 達也
(早版をベースに加筆修正した正式版レポートです。)

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