「Inside Salesforce R&D ~ Salesforce.comのアジャイル開発手法」 – 及川 善之氏


セールスフォース・ドットコム社の開発事例です。「クラウド」と「アジャイル」というキーワードにつられて参加しました。
クラウドの利用についての話を想像して参加した方も多かったようですが、内容は、セールスフォース社のサービス、同社内のシステム開発事例です。

自らもクラウドを通じたサービスの提供を行っている倉貫義人さんがファシリテーターを務め、倉貫さんからも「クラウドを通じたサービスの現在」のお話がありました。
この話もクラウドとアジャイルがなぜ相性がいいか?といった非常に興味深いお話でした。

続いて本題は、セールスフォース・ドットコム社のCTOの及川喜之さんから、同社の開発事例のお話です。目新しい手法を期待された方には(いい意味で)残念な内容でした。と言うのも巨大なシステムにも関わらず、その内容はアジャイルの導入を検討された方には、耳慣れたごく一般的な内容だったためです。
普通のことを継続して改善し続け、規模の難しさを克服していることは、驚きでした。

それぞれ導入部、本題についてご紹介します。

 

■導入部

現在、顧客へのサービスの提供は、「所有」から「利用」へと移っているというお話から始まりました。クラウドの利用が増えていることで、そう実感されている方も多いと思います。

(倉貫さんのお話)

これまでのサービスの提供は、システムを開発して納品する「製造業型」でした。システムは、構築を始めて納品する時点で最高の品質となり、あとは劣化していきます。
(保守・償却フェーズ)
ところが現在、クラウドで提供されているサービスは、すぐに利用ができ、利用とともに品質を向上させていく「サービス業型」です。サービスの質は利用している今現在が一番高くなるはずです。

では「サービス業型」では、何が大事になるのか?

(倉貫さんのお話)

継続性・保守性を守る必要があります。サービスは止めることができず、完成することがありません。
従来の「製造業型」では、納品以降の変更コストが増大していきます。継続して変更を続けることが困難になります。
しかし、テスト駆動開発など、変化を前提とする開発手法、すなわちアジャイルでは、変更コストは抑えられます。繰り返し変化を取り入れていくアジャイルな開発手法とは必然的に相性はいいと言えます。

クラウドでのサービスに移行している現在と、そのサービスには、アジャイルな開発が相性がいいことをお話したところで及川さんにバトンタッチです。

 

■本題

及川さんは以前、別の外資系企業で開発を行っていたそうです。
ようやくバージョンアップをしても、インストーラのバグがあると目も当てられない状態だった、と当時を振り返り、「(インストーラがない)クラウドはいいです!」という発言は、非常に実感がこもっていて会場の笑いを誘いました。

セールスフォース・ドットコム社には買収したサービスもありますが、ほとんどは自社開発、開発要員もすべて自社の社員ということでした。
そして自社で内製する話の前に、現在のセールスフォース・ドットコム社のサービス構成についての説明がありました。サービスの規模やトランザクション数を聴くとシステムの大きさを認識させられます。
しかし、このような大きな規模でも、平均年3回のリリースを行っているということです。そういったリリースが行える秘密は何か。その開発手法や取り組みについての説明が始まりました。

(及川さんのお話)

セールスフォース・ドットコム社では、ADMというスクラム/XPスタイルの開発スタイルを適用しています。
もちろん、ADM以前は、ウォーターフォール型の開発プロセスでした。その中で、次の問題が発生していました。

  • 長いリリースサイクルとスケジュール遅延
  • フィードバックの欠如
  • チームの生産性低下
  • お客様の不満

リリースする機能の数は減っているのに、リリースまでの期間は延びていく状態でした。
問題を解決するため、トップダウンによるADMの導入が決定しました。ADMの導入後、15ヶ月後のアンケートも好評で、メソッドもインクリメンタルな改善を続けました。

ADMの柱は以下の通りです。

  • スクラム
  • 品質優先
  • オートメーション

ここまでお話を聴いて、目新しいアジャイル開発の事例ではないことに非常に驚きました。紹介された「スプリント」「チームの人員数」「チームメンバーの構成」、どれをとっても裏技のない正攻法なアジャイル開発でした。
それは、基本は外さず継続的な改善を行い、開発の見える化、完了の定義をはっきりさせるなど誤解がないように進めるといった内容でした。
この開発手法を行うことで驚くほど「デグレが減った」と及川さんは話されました。「テストファースト」や「一つのことに集中」といったことも挙げられましたが、これも普通のことです。

普通のことを適用し改善を続ける、その勇気と行動力があれば、成功につながるという自信にもなりました。今現在、セールスフォース・ドットコム社の成功が偶然だということではないということがヒシヒシと伝わるセッションとなりました。

一歩一歩、このAgile Japanで何度も聴くことになるフレーズをかみしめるセッションだったと思います。

 


– レポーター:納富 隆裕 (運営スタッフ) –

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