「常識の壁を打ち破れ」〜大手ベンダーにおける新たな取り組みへの挑戦事例〜

高橋 康氏、中江 功氏
セッション詳細


 

大手ベンダーの中で、アジャイル開発的な方法を工夫して独自に作りだすことで成功した事例と、CCPMに取り組み成功した事例をその当事者である現場ベテランPMより紹介いただきました。

 

■電子カルテシステムのパッケージ開発をアジャイル的なやり方に変えて成功


NECシステムテクノロジーの高橋氏率いるプロジェクトでは、2003年より病院内電子カルテシステムのパッケージ開発を国内10名、海外10名の体制で行っています。このプロジェクトでは、年に1回、大規模バージョンアップを行っており、当初は作業工程の後戻りを許さないウォーターフォール型で開発していましたが、2005年より4週間に1度リリースを行うアジャイル開発的な方法に変更しました。

 

アジャイルありきではなく

アジャイル開発技法ありきではなく、自分たちのプロジェクトで良いやり方を追求し実践した結果、アジャイル的なやり方になりました。IT業界では、重大トラブルへの対応のために人間らしい生活ができなくなることがあったりしますが、アジャイル的な開発を行うようになってからは重大トラブルが起きていないというのが大きな成果です。一方で、稼働率が100%近くに上がったため、ゆとりがなくなった面もあり、今後の解決すべき課題と考えています。

 

工夫した点

国内2週間、海外2週間で、1サイクル4週間の開発スケジュールを組んでいますが、これでは、それぞれ2週間ずつ手待ちとなるので、2つの開発項目を2週間ずらして同時に走らせています。また、製造とテストを合わせて2週間の海外での作業に収まるように、開発要件を2週間の規模に分割するなどの工夫もしています。

 

毎日1時間の朝会に集約

毎日1時間の朝会を行っています。1時間も毎日話すことがあるの?と思われるでしょうが、各種レビューや勉強会もここで行っており、話すことがないということはありません。代わりに朝会以外の会議は廃止しました。


アジャイルプラクティスでは、朝会は、15分間程度の短いスタンダップミーティングとされているので、1時間の朝会と聞き、ちょっと違和感を覚えました。しかし、代わりにあちらこちらに割って入る他の会議を廃止したので、会議のために中断した作業を再開する際の頭を切り替えやオーバーヘッドを削減ができた効果はとても大きいであろうと思いました。

 

■大規模SIプロジェクトで、CCPM導入後8ヶ月間で、3ヶ月の期間短縮に成功


以下のプロジェクトで、富士通グループ側のプロジェクトリーダーを務める富士通関西システムズの中江氏よりCCPM導入の成功事例を発表いただきました。

2010年1月より大和ハウスグループの経営基盤へのSAP導入に着手。富士通側の予算で2,000人月規模の本プロジェクトおいて、途中の2011年2月よりエリヤフ・M・ゴールドラット博士が作りあげたTOC(制約理論)に基づくCCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマ ネジメント)を導入し、8ヶ月間で3ヶ月の期間短縮と、残業半減(富士通側要員で、月55.7時間から月27.8時間)を実現。CCPMを実践することにより、助け合うプロジェクト風土も形成できました。
CCPM 大和ハウス」や「CCPM 富士通」で検索すると、日経IT Proの計4回にわたる連載記事など、詳しい話を読むことができます。

 

CCPMの考え方

プロジェクトとは遅れるもの。それを見越して、工数見積もりの際にはそれぞれのタスクの作業者、管理者は、安全バッファを加えるが、それでも予期せぬことが起こりプロジェクトは遅延します。

CCPMでは、各タスクの見積もりを従来のそれから半分の日数に短縮して、その代りに半分の工数をプロジェクト全体の大きなバッファとして持ちます。
半分の期間としたことにより、タスクはチャレンジ期間に変わり、計画より伸びる場合があるのは当然となり、結果、作業者は過度なストレスから解放され前向きにプロジェクトに取り組めるようになります。また従来は、問題が発覚するまでタスクごとの自己解決にゆだねていましたが、CCPMではクリティカル・チェーン(クリティカル・パス)上のタスクが遅れてきた場合には、プロジェクトバッファを使用して先手先手の対応を行うことが可能となります。

 

CCPMのポイント
  1. 無駄とり
    • マルチタスクを排除するように段取りする。
    • 会議は、あらかじめアジェンダを決め、効率的に15分や30分という非常に短時間で実施する。
  2. 支援するマネジメント
    • 3〜4人に1人、実作業は行わない、作業環境の整備やタスクの要望をプロジェクトに伝えるなどの支援を担当するタスクマネージャを置く。

(中江氏の個人的な感想として)CCPMにより、無駄を省き、マルチタスクをやめること、タスクマネージャなどの仕掛けにより準備がしっかりできること、タスクごとの固定期間を設けないので、期限が来たために無理やり出荷することなどがないことにより、必然的に品質は向上し、品質改善活動なしで品質があがります。

 

CCPMに取り組んだ結果
  • プロジェクト風土が変化し、遅れても「恥じない、責めない文化」、チームで助け合う快適なプロジェクト現場が作りだせた上に残業も減り、ワークスタイルどころかライフスタイルが変わった
  • 納期を守ることに自信がもてるようになった。

 


ですが、CCPMは魔法の杖ではありません。成功させるには、顧客も含めてCCPMの本質、理屈を理解し、トップマネジメントの協力、プロジェクトメンバの納得を得て適用することが重要です。
ITプロジェクトへの適用はまだ希少です。みなさん広めていきましょう。


公認レポーター:能丸 耕太郎

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です