WOMANSセッション「女性が働くことの可能性を考える~IT業界は女性が働きにくい世界なのか?~」 – 佐々木 順子 氏・上田 雅美氏


女性の働き方にとどまらず、女性とともに働く男性、また女性がいる職場環境について考えるセッションでした。

セッションの間、参加者は身近な問題だけに「うちはどうかな?」という感じで聴いているように見受けられました。
全体の和気あいあいとした雰囲気をつくっていたのは、アネゴこと上田雅美さんの空気感が大きかったです。自由な発言と振る舞い、本当に肩の力がまったく入りません(笑)

佐々木順子さんは、自らのキャリアに基づき、話を補強してくださいました。ときに重い問題かもしれない、個人や組織の問題も、なんとか解決できるのではないかと感じさせてくださったのは、佐々木さんのキャリアによるところが大きかったのだろうと思います。
佐々木さんも、人当たりは柔らかいにも関わらず、ときに歯に衣着せぬ物言い、二人の掛け合いに場が和みました。

震災後ということもあり、女性だから、男性だからというより、もっと根っこから考えざるを得ないという思いも最初にお二人から語られました。

 

■セッション前半

セッションの始まりは、リンダ・ライジングさんからのメッセージが紹介され、Agile Japan 2011の中のセッションであることを思い出させてくれました。

セッションは事前にTwitterで告知されていたアンケートをもとに、その回答を見ながら進められました。 アンケートの回答は男女ともに30代が多く、人生におけるライフイベントが多い時期(結婚や育児)だし、会社でも部下を持ったりする年代、女性のキャリアについても30代が一番関心が強いのは自然かもしれないというお話からスタートしました。

アンケート前半の質問で多かったのは、ダイバーシティ(特に女性問題)に関する会社を含めた周りの取り組みについてでした。

※本来、ダイバーシティは多様性を意味し、人種・民族・宗教などの意味も含みます。もちろん性別の問題は、最初に横たわる大きな問題であるということは変わりません。

「制度はあるが機能していない」「制度があるかわからない」といった回答が大部分を占めていました。「わからない」という回答は、この業界特有の自社で仕事をしていない人が多いことも原因かもしれないという意見もありました。

ときに、会場への問いかけも忘れず、和気あいあいとした空気は続きました。

 

■セッション後半

アンケートの後半は、職場での女性、男女の協業に関する質問でした。
回答を見ながら、佐々木さんの意見で多かったのは、性差という問題について、性差と見られているものも、実は個人差と考えていい問題が多いということです。

(佐々木さんのお話)

女の子は女の子として育てられ、子供の遊びも、男の子と女の子とでは異なります。
そのため、社会人になったとき、会社という男性社会の組織の中で、女性が男性社会での経験が不足してしまうのは仕方がないことです。そういった組織の中で、「空気が読めない」「俯瞰できない」といった評価に結びついてしまっています。
男性社会での経験さえ補えば、女性特有の問題の多くは取り除けます。

そこで、「(問題があるなら)だったら言ってよ!」と上田さん。
会場の女性も問題があるなら伝えてくれる上司がいいという意見が多かったです。
この意見は、しっかりコミュニケーションを取っていない男性側にも問題があることを感じ、耳の痛いお話でした。
また、現在、階層構造となっている会社が多いですが、今後、フラットな組織になっていった場合、今度は女性の経験が活きてくるのでは?といった意見もありました。

ただ、仮に男性社会の経験が少ない女性が働いているとしても、現在の日本では、女性の管理職が10%弱、役員では1%台という数字もあり、あまりに少ないのでは?という意見は、まったくその通りで、男女の割合として不自然に感じるところでした。

(「男性だからリーダーシップがある?」というお話では、混乱する政局のお話も…)

 

■セッション最後

セッションも終わり近づき、上田さんから「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」の紹介がありました。

会場への問いかけは、「今のキャリアは子供の頃からなりたかった職業ですか?」
ほとんどの参加者が「違う」という回答でした。
結局、人生のいろんな経験が偶然重なって、今の職業に就いている人がほとんどです。あらかじめキャリアプランを決めてしまうと、失敗したときに傷つくし、後戻りができなくなる可能性もあります。またキャリアプランにないチャンスを見逃してしまう可能性もあります。
佐々木さん曰く、夢に日付を入れたり、目標に邁進するキャリアもあるかもしれない。しかし、私には無理だと思いながら仕事をしていたそうです。佐々木さん自身、固めたキャリアプランから離れて、楽になったとのお話がありました。

「計画された偶発性理論」は、以下の5つの特性を持って、柔軟にキャリアを形成していくという考え方です。

     

  1. 好奇心
  2. 持続性
  3. 柔軟性
  4. 楽観性
  5. 冒険心

ただキャリアプランが柔軟だからこそ、自分の芯はぶらさないようにしないと流されるといった佐々木さんの意見がありました。自分の価値観に照らして何が大事なことであるかは、常々考えておく必要があると思いました。

最後に、上田さんから「計画された偶発性理論」は、生き方をアジャイルに考える方法だという発言がありました。
これからの時代、もっとアジャイルに!というメッセージは、Agile Japan の場ではわかりやすく、最後まで和やかな空気とともセッションが終了しました。

 


– レポーター:納富 隆裕 (運営スタッフ) –