「アジャイル開発 基本のキ」


このワークショップは、西村氏が現場にアジャイルを導入する際によく最初に行っているそうです。講演とゲームでの体験を通して、アジャイル開発の基本的な考え方を学びました。

ワークショップを通じた体験型セッションなので、参加したみなさんそれぞれの気づきがあったと思いますが、本レポートでは私が興味を持った部分を中心にご紹介します。

 

■アジャイル開発はこれまでの開発とどう違うのか?


モノをつくるという観点で、これまでの開発でのやり方とアジャイル開発でのやり方を比較すると、フェーズの呼び方や活動が違っているものの、実は、やらなければならないことは同じということがまず説明されました。

では、これまでのやり方とアジャイルはどう違うのかについて、”的を撃つ”ことを例えに分かりやすく解説されました。
これまでの開発は、ゴールまで一直線に進もうと的を狙って撃つようなものなので、開発に着手する前に、必要なことすべてをどう実現するかをきちんと準備することが重要です。しかも、状況によっては的を外さないようにするのは困難です。的が外れるとは、リリースに間に合わない、出来たものが使いづらいなど、顧客にとって価値のないものに時間と労力が使われることです。

一方のアジャイル開発は、狙って撃つのは変わりません。ただし、まず近くを狙い、確実に当て、当たってから方向をもう一度確認します。ジグザグに進むイメージです。ひとつひとつの的に必要なことから順番に確実に準備し、出来上がりを確認します。大切なことは、顧客の期待に応えられる成果をくりかえし出して確認することです。キーワードは「顧客価値」です。

顧客価値とは何か?急に質問されると答えに窮するかもしれませんが、「自分がお金を払う立場だとしたら?」とお客さんの立場で考えると大切なことが見えてきます。

 

■ゲームでアジャイル体験


頻繁に価値を届けようとすると仕事の進め方自体が変化しますが、変化するとはどういうことなのか?やってみましょう!ということで、トランプを使ったゲームが始まりました。

このゲームは実際のプロジェクトをモデル化したもので、グループ内で一人プロダクトオーナーを決め、あとの人は開発者として、要求を聞いて成果物を届ける作業を行います。

準備が整ったところで、プロダクトオーナーだけ集められてこのゲームの真のゴールが教えられました。そして、ゲームが開始、リリースが完了して1回目が終了しました。
1回目のゲームの確認作業(品質チェック)を行い、開発者にも真のゴールが伝えられました。と、ここで「もう一回やるとしたらどうすれば上手くいくか?」話し合う時間がとられました。グループで出た意見を全体で共有した後、じゃあ本当に上手くいくか試してみましょう!と、2回目のゲームをして、その後、確認作業を行いました。どのグループも1回目より上手くできていました。

さて、1回目と2回目で一番変わったことは何でしょうか。それは、自分たちで仕事の進め方を変更したことです。確認するのは成果物だけではなく、仕事の進め方も絶えず見直さなければなりません。そのための仕掛けが必要です。キーワードは「透明性」、「検査」、「適応」であり、その支えになるのはコミュニケーションです。先ほどのゲームでも2回目の方が1回目より会話の量が増えていました。

 

■アジャイル開発はどう進むのか?


ゲームの後、実際の開発の進み方を説明されました。ゲームで体験したことと照らし合わせていたので、参加者のみなさんは腑に落ちている様子でした。

 

■明日から始めよう


アジャイル開発のプラクティスがたくさん紹介されましたが、全部いっぺんにやるのは大変なので、現場に応じてまずひとつやってみるのはどうでしょうかと提案がありました。ピンポイントで始めて、少しずつ良くすることを続けてほしいとおっしゃっていました。

 

■質疑応答


最後に質疑応答の時間がありました。いくつかの質問の中で特に印象に残ったのは、アジャイル導入で留意すべき点についての西村氏のアドバイスです。

  • 取り組む人間を少なくする。(一プロジェクトからであったり、一チームからであったり)
  • 助走期間として部分的に始める。
  • まずやりたい人を集めて前向きなチームをつくる。
  • 慣れてきてから、広げていく。

 

■おわりに


私は部屋の一番後ろの方からワークショップの様子を見ていましたが、みなさんがすごく楽しそうに取り組んでおり、「私もチームに入りたい!」と感じました。アジャイルな開発現場は、周りの人も引きこむ魅力がありそうです。

 


公認レポーター:石前 あき
(早版をベースに加筆修正した正式版レポートです。)