「アジャイルとパターンランゲージによるセンタリング・プロセス体験」 – 中埜 博 氏


「私は建築家です」
いわゆる「技術者向けセミナー」とはひと味違う雰囲気の中、中埜さんのセッションは始まった。
スライドに映し出されていたのは、ゴーギャンの有名な絵画作品。その絵画を通してゴーギャンは「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」という疑問を呈したとされている。
その上で中埜さんは、ワークショップの目的・意義についてこう語る。

アジャイルプロセスであれ、建築であれ、「自分が何者であるか」が分からない限り、「どこへ向かうか」ということについては分からない。ワークショップは、その「自分を知る」ことを実現するために存在する
座学の形式では、私の話している事を頭ではある程度理解できるが、自分で手を動かさないと、自分で参加していかないと、「テーマに対しての自分の関わり方」が本当の意味で理解できない

なるほど、実体験を通して初めて、理解できるというわけだ。

 

■パターンランゲージ/全体性/センタリング

まずは、「パターンランゲージとは何か?」を知るための説明から。
パターンランゲージは、クリストファー・アレグザンダーにより提唱された考え方である。
そこには「全体性」というものが存在し、その全体性に対して「秩序」があり、「法則・ルール」が存在している。その要素に対して我々がどれだけ関与できるかを知ることで、「我々がどこへ向かう事ができるのか」を理解する事ができるのだという。
また、ある全体性の中心(点ではなく、実体として集約されるもの)を決定していく過程を「センタリング」と呼ぶのだという。

そして、しばらくパターンランゲージに関する詳細な説明を受けた後に、我々はワークショップを通してその「センタリング・プロセス」を体験することとなった。

 

■ワークショップ1:似顔絵で学ぶセンタリング・プロセス

そして始まったのは、「似顔絵」を通じた、「センタリング・プロセス」体験。
参加者は隣り合った人同士で向かい合い、A4用紙にお互いの似顔絵を描いていく。単に似顔絵を描くのではなく、大きく重要なポイントを3つ守りながら描くのだ。

  • 想像で描くのではなく、よく観察してそのままを描写する
  • 決められた「順番」に沿って描く(これがいわゆるプロセス)
    鼻の先端(小鼻/鼻の穴)→頬の笑い皺→鼻の下の溝→口の割れ目→上唇→下唇→ 鼻筋→目(大枠→詳細)→眉毛→アゴの先端→頬の輪郭→耳→髪の毛
  • それまで描いた要素との位置関係を意識して描く

自分が描こうと思うものを描く過程において、「これまで自分が描いてきたものや、これから自分が描こうと思うものがあることによって、より描きやすくなる」 ということが不思議と存在するのだ。
そして上記の手順通りに描くと、どういうことだろう。これまで自分が描いた事のある似顔絵とはまったく違う雰囲気の似顔絵が仕上がったが、確かに、似ている。
中埜さん曰く、

「絵を描く際に『うまく描こう』『人に見せなきゃいけない』と言った本来とは別の力が加わってしまうと、本当に自分らしさを出したモノの描き方をしなくなってしまう

ということだそうな。その危険を避けるために、このようなプロセスがあるのだと言う。

 

■正反合のダイアログによるパターン形成

次に話は「正反合によるパターン形成」の話題へと向かった。
これは、「正しい意見、反対意見を戦わせる事によって、それぞれの良さと悪さを組み合わせ、新たな世界(合)をつくり上げる」という、パターン形成のひとつである。 ダイアログによってお互いの意見を合成し、言葉で合意し絵に描く。 この実験→診断を繰り返すことによって、パターンランゲージによる合意形成が実現するのだと言う。

 

■ワークショップ2:イラスト描写で学ぶパターン形成

次に実施されたのは 「紙への単純描画」を通じた、「パターン形成」体験。
机の上には、正方形の紙が7枚、準備されていた。
中埜さんは「この紙を見ていると、なんとなく、何かが見えてきませんか?」と言う。何も描かれていない紙だが、「何だかここになにかありそうだ」という意識で見る事によって、「なんとなく、この紙を強める何かがある」というものが見えてくるらしい。
その「何か」を強調するために必要な一番シンプルな図形を紙に描き加えてください。ということだ。
これは、複数人数(3~4人)で集まって、以下の手順で進める。

  1. 各人が、「今の状態の紙」に対し、「それをさらに強調するシンプルな図形」を描き加える。
  2. それぞれが描いた紙を皆で見せ合い、その中で一番「特徴が強調されている」紙を合意により選択。
  3. 選ばれた人以外は、選ばれた人の図形を自分の新しい紙へと描き写す。
  4. 上記1~3を7回繰り返す。

この過程を経ることによって、先ほどの「正反合」ダイアログが繰り返され、パターンランゲージによる合意形成がワークショップの中で実現するのだ。 そして出来上がった図形は、何とも奇妙なものだった。だが、それは確実に「自分たちがつくり上げた図形」であり、納得のいくものであった。

最後にそれぞれのグループがつくり上げた図形(過程を含む7枚)を会場前面に貼り出し、中埜さんがそれぞれについて一つずつコメントをつけていく。
面白いことに、各グループごとにまったく違う図形がつくり上げられており、さらには、それぞれがそれぞれの方向性の中で納得のいく図形として仕上がっていた。

 

■まとめ

ワークショップ終了後、中埜さんは

「科学というものは、人間の考え方/感性と深く関わっており、我々の中に存在しているのだ

という事を説明し、「有機的秩序の原理」についての説明をおこなった。
そして、現代の科学における全体性についても話し、

「現代科学において発生している様々な悲劇は、バラバラの単位で受けた科学知識教育により引き起こされている」 

という説明を付け加えた。

最後に プロセスを通じて適切な「質」および「全体」をつくり上げるためには、
「我々自身が何者であるか、そして、どこから来て、どこへ向かっているのか」 を明確に理解している必要がある。
と、冒頭でも話していた内容で締めくくった。


– 公認レポーター:矢島 卓 (DevLOVE) –

2 Replies to “[早版] Agile Japan 2011 – レポート「アジャイルとパターンランゲージによるセンタリング・プロセス体験」 (矢島 卓)

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