レポーター:中西 広充(2017/09/12執筆)

利用品質を向上する「UX/ユーザーテスト集中講座」」が株式会社メンバーズの本社である勝どきラウンジで開催された。講師は、利用品質ラボ代表の樽本徹也さん。ユーザーテストに関して実演も交えた講座だ。
普段、なかなか勉強する機会がない「ユーザーテスト」を学べるというので、期待が高まる。壇上に立った樽本さんは、堅苦しいところがなく、話し方も醸し出す雰囲気も「人なつっこいおじさん」という感じだった。

ユーザビリティテストの3要素 ―効果、効率、満足度

まずはユーザー中心設計という概念(?)に関しての説明。
ユーザー中心設計とは「調査」「分析」「設計」「評価」「改善」し「設計」し、評価し「改善」の反復を繰り返していくことで、よりよい製品(サービス)を作っていく手法のこと。今回はその中で「評価」部分の講座だ。

ユーザーテストの基本として、ユーザビリティテストの3要素(効果、効率、満足度)があり、中でも「効率」と「満足度」が重要だという。「ゴールまで達成できたか」「効率よく達成できたか」が重要。

たとえば「本屋」というサービスに対して「本を買えた」ことで「効果」はあった。だが、それに1時間かかった場合、「効率は悪く」「満足度は低い」ということになる。そこを改善するためにユーザーテストを行い、改善点を見つけ、改善する。そうすることで「効率をよくし」「満足度を上げる」のだ。

講義する樽本さん

難易度の高い「テスト設計」

ユーザーテストの実施手順は「リクルート」「テスト設計」「実査」「分析」「再設計」の5つ。

「リクルート」はテストを受ける被験者のペルソナ設計だ。できるだけリアルな感想を集めるため、そのサービスを利用する「代表的なユーザ」「資格のあるユーザ」像は明確にし、「初心者」は外すようにすることが重要だという。
たとえば、スマホアプリの場合、androidユーザ、iOSユーザ両方、揃えること、また具体的にすることも大事。

「テスト設計」は重要な部分だけに難易度が高いところ。ユーザにやってもらうべきことを「タスク」として設定するので、ここを間違えると全てが狂う。
ポイントとして、まずは

  • 思いつくタスクをできるだけ出して、見直し、主要なタスクに絞り込む
  • それをユーザの視点で発想する
  • スタートとゴールを定義し、ゴールに到達するか、どうやって到達するか
  • シナリオ化する

と説明を受ける。

ここで、「テスト設計」のワークショップに入る。
アプリの「テスト設計」のため、実際にandroidユーザ、iOSユーザと分かれてチームを作成。自分たちのチームは「乗換案内」をテーマにテスト設計に挑戦。「改善すべき機能は」「どういうシーンで使うか」を全員で話し合い、決めていく。全員一致で決まっていくものもあれば、「そこは重要か」と議論になるものも出る。

ユーザーテストには根気と集中力が必要

次に「実査」として、あるアプリの評価テストを実施。
参加者の中から「リクルート」した被験者のスマホ画面をプロジェクタで投影し、指示に従って操作をしてもらう。

被験者が樽本さんの指示通り、アプリを操作する。同時に、自分がどのような意図で操作しているかを声にして説明する。
話を聞いていると、ユーザーがどういうことを考えながらアプリを操作しているのか、手に取るようにわかるのだ。次のステップが無意識で進めるほど分かりやすい部分もあれば、ヘルプを探すほど悩む部分などいろいろと見えてくる。

ユーザーの動きを観察しつつ、話に耳を傾け「分析」し、改善点と思われるポイントをピックアップしていく。最後にチームで共有して、改善点をまとめる。このまとめたものを基に製品(サービス)を「再設計」するのだ。
文章だけ読んでると簡単そうに思えるが、体験すると「分析」「再設計」とも根気と集中力が必要な作業だ。

終了後、疲れも感じたが、「知る」だけでなく「ユーザーテスト」を体験できた、貴重な1日だった。

ユーザーテストを実演する

レポーター

中西 広充(なかにし ひろみつ)

ディレクター/エディター
雑誌編集者を10年務めた後、Web業界に転職。メルマガ運用、EC(BtoB、BtoC)、営業などさまざまな業務を経験。
現在は、Webディレクターとして就業中。