レポーター:井上(2017/09/09執筆)

WEBディレクターに転職してまだ4年程度、駆け出しのIT系派遣会社員です。
今回体験したのは、2017年8月26日開催の「利用品質を向上する「UX/ユーザーテスト集中講座」」。人間中心設計の基本概念を知ることができるうえに、現場にすぐ取り入れられる実用的な講座です。

奥深く学ぶのにはとても時間がかかるといわれる人間中心設計ですが、その一端に触れるのに加え、今までやってきた内容の足りないところや間違っているところを探そう、というのを目的に受講しました。
「ユーザーテスト」=「サービス立ち上げの大失敗を防ぐメソッド」という認識ですが、それではたして合っているか?というレベル感。まるっきり素人目線で、当日の感想などを述べていきます。

受講の感想

会場は株式会社メンバーズのラウンジ

ユーザーテストはいわゆるダメ出しの要素があるのですが、そこでわかるのは、だいたいが「ふつうわかるだろ」的なところです。ある程度の経験やセンスを持っている人なら自然に取り入れている部分も多いでしょうし、専門書籍を読むぐらいで足りるかもしれません。
とはいえ今回受講してわかったのですが、ユーザーテストの設計は、いざやってみるとかなりの確率で間違えますし、どうかするとブレます。現場では致命傷になることもあるので、今回の受講は、我流のトライアンドエラーを繰り返すより効率がよいと感じました。

ユーザビリティの三大要素といわれる「効果」「効率」「満足度」に直結することから、今後、WEBをはじめサービス全般で主流になっていくと思われます。受講してがっかりということはないはず。
どこまで学ぶべきかは人によりますが、いろいろな職種の人におすすめできます。

当日のようす

会場は、勝どきのトリトンスクエア37階、株式会社メンバーズのラウンジ。窓からは晴海の海を一望できます。

窓の下には晴海の海が広がる

当日のスケジュール

  • 10:00~11:00 イントロ座学
  • 11:00~11:40 リクルートのワークショップ
  • 昼休み
  • 12:30~14:30 テスト設計のワークショップ
  • 休憩
  • 15:00~17:30 観察・分析のワークショップ
  • 17:30~18:00 エンディング

最初に基礎の座学、その後、ワークショップで身にしみこませる流れでした。

ふつう、タイムスケジュールって事前に教えてもらえるものだと思っていたのですが、事前配布資料に記載がなかったので、スタッフから事前準備のやり取りをスマホで撮らせてもらいました。当日、講座がはじまっても事前通知はなく。
ほぼまる1日の講座で、流れや休憩がわからないのは受講者としてかなりつらいので、今後の改善に期待します。

講師は樽本先生

講師は、UXテストの第一人者といわれる樽本徹也先生。『ユーザビリティエンジニアリング』を執筆された方だそうです。
今回の主催者、HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリストの三上さんによるあいさつも。

あいさつをする主催の三上さん

午前は座学:基本的な知識をインプット。集中力が必要

朝から夕方まで長めの講座なせいか、全体的にリラックスムード。一方、樽本先生は正座です。

講義をする樽本先生

講座やセミナーにはPC持参、講座内容を撮影したり、話に上った単語を調べたりメモしたりします。と書くと意識高い系ふうですが、つい「ドラゴンボールの新しい主題歌、二番の歌詞どんなだっけ」とか、どうでもいいことが浮かんだりするので厄介です。

でもこの講座では、最初から集中をおすすめします。なぜなら、数秒のよそ見で話についていけなくなりヤバイから。
語り口調はフランクでわかりやすいものの、事前配布資料をさらに深掘りしたお話が聞けるスタイルです。ここでインプットした内容が、あとに控えるワークショップの完成度にかなり影響することもあり、聞き逃すと相当もったいないことになります。

講義の途中からは、ユーザーテストの被験者を集めるためのワークショップになりました。
求めるユーザー像を特定し、リクルート(人集め)のための内容をA4用紙にまとめるというものです。近くの受講者さんたちとグループを組んで相談しつつ、各自リクルート内容を完成させて午前の部終了です。

午後(1):ユーザーシナリオ~タスク作成

午後はワークショップ中心、ユーザーテストの設計・テストを作成していきます。今回の講座の肝、ユーザーテストの項目(タスク)作成を含みます。
内容をしっかり理解して落とし込めば、個人の資質や経験年数に関係なく、確実に成果に結びつくと思われます。

ワークショップのようす

ワークショップではグループごとに分かれ、実際に運用されているサービスを選ぶところからはじめます。ユーザーシナリオの作文からタスク作成までが話に聞く以上に難しく、また一番の醍醐味を感じる部分でした。

午後(2):スマホ操作によるユーザーテスト実演と結果分析

2人のテスターによるユーザーテストをモニターに映し出し観察。その結果をマトリクスに落とし込むことで、改善の優先順位や、どういった方面に改善するべきかがわかります。

ユーザーテスト実演中

実演を見学する時間が長いです。2人目ぐらいから正直、少々ダレてしまいました。
このあとのワークショップで使う情報になるので、事前に流れを把握しておけばよかった。個人的な反省点です。

とはいえワークショップは非常に有意義でした。
グループで問題点や改善点を挙げる際、意見が分かれるのは常ですが、手法そのものが中立にあるのでもめることがありません。自然と全員の目線が統一されていきます。判断材料として「語尾」がポイントになる点も、いろいろ応用できそうです。

グループで問題点や改善点をまとめる

知識をどう生かす?

普段は非IT企業のWEBサイト解析・運用などに従事しています。講座受講後、いま問題のあるものについて、今後への足掛かりが一つ増えました。
成果が表れるのはこれからですが、自分自身の表現の仕方に変化があり、業務上のコミュニケーションに厚みが増した感はあります。

たとえばサービスや案件の規模に従って関わる人も多くなるものですが、全員が同じ温度感ではなかったり、知識を備えていなかったりします。各人の裁量や権限、利害から生まれる微妙なパワーバランスが、サービスのよしあしに影響を及ぼします。よいサービスをつくるには、まず利害関係者の信頼を得たうえで、全員が納得するかたちで優先課題をピックアップすることも重要です。

そこで、今回学んだ内容は「企画段階からサービス開始後まで、作り手側・使い手側とあらゆる人を巻き込むための正しい順序」として使っていこうと思いました。

UX/ユーザーテスト集中講座はこういう人におすすめ

  • なんとなくの感覚で判断しがちの人
  • 考えるより先に動いて失敗しがちな人
  • 作業をしているうちに、なにがなんだかわからなくなる人
  • 課題感はあるけれど、どう改善したらいいかわからない人
  • 「でも自分はこうしたい、こうしたほうがいいと思う」を曲げられない人
  • ユーザーを自分の思い通りに動かしたい気持ちがある人
  • 「都度作業して終わり」に疑問を感じている人
  • キャリアに対して成功体験が足りないと感じる人
  • クライアントやまわりのスタッフとの交渉が苦手な人
  • これという自分の専門分野がほしい人

レポーター

井上(いのうえ)

WEBディレクター。
経理事務員、紙面・WEBライター、コンテンツ企画制作などを経てIT派遣会社に転職。