Agile Japan 2016 セッションA-5

アジャイルじゃないアジャイルの話:Agile Japan 2016 レポート(8)

Agile Japan 2016 セッションA-5

キャリアのスタートはSIerのエンジニアだった栗栖氏。SIerからはてなに転職して社長になるまでをふりかえり、大切にしていることや考えたことを当時のエピソードを交えながら静かに、しかし熱く語ってくれました。最初に「アジャイルな話はほとんどできません」と宣言して笑いを誘った栗栖氏ですが、しっかりとアジャイルのマインドが込められていました。

Agile Japan 2016 セッションA-5
アジャイルじゃない話

はてなへの転職で始まった新しいキャリア

Perlの開発経験がないながらも、エンジニアとしてはてなに転職。まずは、エンジニアのまとめ役として「うごメモはてな」というサービスを任されたそうです。当時は想像すらしていなかったそうですが、この後、栗栖氏は、

エンジニア⇒ディレクター⇒プロデューサー⇒本部長⇒社長

と、島耕作シリーズばりの怒涛の勢いで役割が変化していきます。

ディレクターになったときは「返済することを前提に、技術的負債を恐れずに積極活用する」などの判断をしたそうです。エンジニアだと、そもそも技術的負債をつくらないことを考えますが、ディレクターだと、期日までに動くものができれば技術的負債もいとわないと考えます。この両極端の発想を栗栖氏はうまくバランスをとりながら采配したそうです。

他にも、目まぐるしく変化する役割の中で大切にしてきたことがたくさんあると話す栗栖氏は「バランスの人」だと感じました。与えられた役割によって達成すべき目標や重視すべきことは変わりますが、栗栖氏は、それぞれの役割が大切にしていることを尊重し、全体を俯瞰してバランスを取ることを一貫して大切にしているからです。

「社長 仕事」でぐぐったあの日

そんな栗栖氏がはてなの社長になったのは2014年。今までに担った役割はロールモデルやイメージがそれなりにあったので、自身の経験も総動員してなんとかやってこれたそうです。
しかし、社長になったあの日。「社長の仕事ってなんだろう?」「なにをすればいいのだろう?」がまったくわからず、 「社長 仕事」というキーワードでGoogle検索したそうです。

結局、いくら調べても検索エンジンは確かな答えをくれませんでした。仕方なく手探りで行動することにしたそうです。それから約2年の月日が流れましたが、いまだに社長の仕事とはなんなのかはよくわからないそうです。

そんな道なき道をゆく栗栖氏が大切にしていることは次のことだそうです。

  • 働きやすい環境を整える
  • 進む方向を決めて共有する
  • なるべく現場に直接介入しない
  • 先のことを考える

筆者は、社長(経営者)の仕事は「決断すること」と考えているので、栗栖氏の「進む方向を決めて共有する」「先のことを考える」というのは、まさにイメージ通りでした。さらに「働きやすい環境を整える」「なるべく現場に直接介入しない」という項目が、栗栖氏らしいバランス感覚に思えます。スタッフが働きやすい環境を整え現場を尊重することは、栗栖氏が本部長のときに大切にしていた「なるべく信頼して任せる(責任は自分が負う)」に通じるからです。

現場を信頼して任せるというのは、できそうでできないことです。自分が責任を負うのであればなおさら、目先の結果のためにマイクロマネジメントを選びがちです。もし筆者が社長だとしたら、中長期的には信頼して任せることが必要だとわかっていても難しいかもしれません。栗栖氏は、目先の結果にとらわれず、中長期的な成長を会社全体でつくりだそうとしているのではないでしょうか。

少年野球の監督業から学ぶ

エンジニアとしての転職、はてな最初のサービス「人力検索はてな」のリニューアル、大規模受託開発の指揮、そして社長と挑戦を続けてきた栗栖氏ですが、プライベートでも挑戦をしています。それは息子さんの少年野球チームの監督になったことだそうです。

野球経験はまったくのゼロ。学生時代は演劇三昧だった栗栖氏が、少年野球チームで1年間のコーチを経て監督になったのには理由があります。監督として実践することや考えることが、普段の仕事の気づきにつながり相互補完できるからだそうです。
たとえば、チーム目標の明文化、試合結果のまとめと共有、出欠管理などは、普段の仕事と共通する部分があるんだとか。少年野球チームの監督に限らず、このような経験は仕事にも相乗効果があるので、面倒くさがらずにやってみることをオススメするそうです。

ここからも、栗栖氏の仕事とプライベート、そして家族との絶妙なバランス感覚が見受けられます。まるで近江商人の三方よしを見ているようですね。

筆者も、仕事以外の経験が役に立ったことが何度かあります。筆者の場合はバスケットボールですが、自分自身に際立った身体能力がなくても、ボールとメンバーをうまくつなげることでチームに貢献できた経験は、チームで仕事を進めるときの基本スタンスのひとつとして非常に役立っています。

人生はアジャイル。とりあえず「やってみなはれ」

新しい挑戦として「はてな的受託開発」を始めた栗栖氏。つくって終わりのSIer的な発想ではなく、はてなの自社サービスと同様に、開発から運用まで責任持って行うという新しいビジネスモデルなんだそうです。自社の強みを生かしながら新しいことに挑戦していけるのは、栗栖氏の取り組みだけでなく、先人たちや社員全員が努力し積み重ねてきたよい企業文化や働きやすい環境が整備されているからでしょうか。

最後に人生をアジャイルにたとえて次のように締めくくりました。

  • 外部環境はどんどん変わるし、自分のやりたいこと/やれることも実は変わっていることがある
  • とりあえず「やってみなはれ」
  • 100%の自分を待っていてもなかなかそのタイミングはやってこない
  • プロジェクトと同じように定期的に振り返りを入れていこう

筆者は、とりあえず「やってみなはれ」の精神に共感を覚えました。人生は大なり小なり選択の連続です。なにかに挑戦するとき、100%準備が整っていることってなかなかないんじゃないでしょうか。それでも選択し、決断して進まないとなりません。「迷ったら積極的なほうを選べ」というのは栗栖氏に影響を与えた元上司の方の言葉だそうですが、迷ったら「とりあえずやってみる」、そして「定期的にふりかえる」ことで失敗から学びながら前に進めるのではないでしょうか。

優れた人を見ると「あの人はなにをやってもスゴい、できる、うまい、特別だ」って思いがちです。でも本当にそうでしょうか?まれにそういう人もいるかもしれませんが、多くの場合、ごく普通の人が日々の仕事やプラベートから学び、カイゼンし続けた結果を見ているだけかもしれません。そんなことを考えつつ、栗栖氏の「アジャイルの秘密」を垣間見た気がしました。

とりあえず「やってみなはれって、いい言葉ですよね。

アジャイルも、やらなわからしまへんで。

Agile Japan 2016 セッションA-5
人生はアジャイルである

参考文献


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