Agile Japan 2016 基調講演1

世界中でスクラムによるハードウェア製造は始まっている

講演資料と合わせてお読みください。

Agile Japan実行委員の平鍋健児さんによる紹介(以後、逐次通訳)でスタート。

ハードウェアを含めてアジャイル開発をやっている珍しい事例です。
ソフトウェア開発とはまったくかけ離れた分野の農業―ワインもスクラムでつくっているとのことで、僕もとても楽しみにしている講演です。

スクラムとは、2倍の仕事を半分の時間でつくること。
ワインの製造も半分の時間で2倍にすることができるということです。

敬意をこめて「awesome!!」(荘厳な、すばらしい)と声をかけ、Joe氏をお招きしましょう!

会場全員で声かけの練習をした後、「awesome!!」の声かけと大きな拍手に導かれてJoe Justice氏が登場しました。

Agile Japan 2016 基調講演1
平鍋さんの通訳と補足説明付きで進行

まず、スクラムチームで行われているプロジェクトが紹介されました。

火星に1億人が住める環境をつくるミッション

1つのチームでソフトウェアとハードウェアをつくっているとのこと。「そんな壮大なプロジェクトもスクラムでやるんだ!?」と驚きと発見でした。

Amazonの倉庫ロボット「Kivaシステム」

小回りのきく何個ものKivaというロボットをつくっているのは、スクラムチームだそうです。このロボットのおかげで、Amazonの配送コストは大幅に削減。つらい仕事を肩代わりしてくれるので、人間は他の人間らしい業務に就けるようになっている、ということでした。

ハードウェアをスクラムチームで製造するメリット

すでにポルシェ、ボーイング、Microsoft、ホンダ、ボッシュなどのハードウェア企業で、スクラムによる製造を行っているそうです。

スクラムチームでつくることのメリットを、Joe氏は次のように述べました。

  • Scrumは、我々の知る中で最もリーンで、最もシステマチックな改善フレームワークである。
  • 人々が仕事をするなら、Scrumチームになれる。
  • 機械が仕事をするなら、人々は機械をアップデートして、よりよく仕事を行い、よりよい物を作れるようにする。
  • 機械のアップデートが速いほど、改善速度は速くなる。
  • すばらしいScrumチームは、機械をアップデートする。
    そして、機械は生産に最小限の影響しか与えずにアップデートできるようになっている。

講演資料 p.5

「ここに、みなさんが日本の経済を変える鍵がある」とJoe氏は続けました。
たとえば、ソニーは7年ごとにPlayStationを出しているが、1年ごとに出したらどうなるか?MicrosoftのXboxは売れなくなるだろう、と。

ハードウェアをどのようにスクラムでつくるのか?

人間が居住不能になるまであと14スプリント

続いて「気候変動により人間が居住不能になるまであと14スプリント(84年)しかない」という具体的かつ衝撃的な見積もりの説明がありました。(講演資料 p.8
主要因は石油・石炭による温暖化のため、それを解消するには工場・企業に継続的改善をもたらすスクラムが必要、という話です。

では、具体的に「ハードウェアをスクラムでどのように進めるのか?」という疑問を持ちますよね。
次のような特徴があるそうです(講演資料 pp.15~35の画像も参照するとわかりやすいと思います)。

  • ハードウェア部品一つ一つを1スプリントでできるようにするには、サプライヤーの協力が必要
  • それぞれのチームが1つのモジュールを所有し、毎週、更新・テスト・製造を行う
  • 契約ファースト設計により、多くの派生設計のコストを下げる
  • 物理接続とデータ接続を事前に交渉しておくことで、設計の自由度をあげ、製品の結合度を下げる
  • インタフェースは、再交渉を避けるために意図的に過剰設計にする

なるほど、ソフトウェアのスクラム開発と同様に、モジュールを分割して進め、毎回、更新・テスト・製造を行うプラクティスはそのまま適用できるのですね。ただ、ハードウェアならではの接続部分の交渉は事前にしっかり行う、ということです。

ワインもスクラムでつくる

ワインの製造もスクラムのプラクティスで進めます。カリフォルニアにワイナリーを構える、世界最大級のスパークリングワイン会社の事例です(講演資料 pp.27~35)。

きっかけはなんと、ある日の経営層のランチでフォーチュンクッキーに入っていたメッセージ「YOU WILL SOON MAKE A CHANGE AT WORK」だそうです(講演資料 p.28)。

そして、とある日のランチで農作業している全員を呼び、「ワイナリーをハッピーにすること」を考えました。Agile Japanのメイン会場くらいの場所(400名くらい収容可)で大きなバックログをつくり、ヘッドが優先順位をつけたのだそうです。「このワイナリーを早くハッピーにする」というバックログです。バックログ一つ一つを実行するためにスクラムチームをつくり、バリューストーリーマップを描き、「チームバブル」という名前をつけ……。

「2倍のシャンペンを半分の時間でつくる」ことをみんなに見えるようにして、実現しているそうです!

Agile Japan 2016 基調講演1
講演するJoe氏

ハードウェアのスクラムはすべての生き物を救う

ここまで、Joe氏が提言するスクラムのメリットを述べてきました。ただ「他の開発手法と比較してなにがよいのか?」が腑に落ちていないと思います。その答えの一つが以下です。

契約ファースト設計と柔軟なラインのおかげで、ラインのスケジューリングは毎日行える。
モジュールレベルでの依存性が解消されているので、依存マトリクスではなく、マルチスレッドプログラムのように動かせる。

対称型マルチプロセシングと、スーパースレッディングを導入した将来のラインは、さらに10%エネルギー消費を削減できる。

講演資料 p.56

「さらに10%エネルギー消費を削減できる」というロジックが、前述の「地球を救う」というメッセージにつながりました。Joe氏は「ここにいるみなさんが、自分たちの会社がグローバルエコノミーを意識し地球を救う鍵になることを信じている」とも述べました。

ソフトウェア開発プロセスをはるかに超える「地球を救うミッション」の一員になるかもしれないとは!
私も、どんな小さな仕事でも地球を救うことにつながるかもしれないという希望を抱きながらAgileに取り組んでいこうと胸に深く刻みました。

参考文献


Agile Japan 2016

Agile Japanとは

レポートコーナー

One Reply to “自動車も飛行機もワインも!「スクラムで世界を変えよう」:Agile Japan 2016 レポート(7)

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