はじめに

食べ歩きSEの「野球っぽいお仕事の話」からリニューアルしました

2012年11月に連載を開始した食べ歩きSEの「野球っぽいお仕事の話」も、今回で11回目を迎えました。
ご愛読、ありがとうございます!
より多くの方々に野球の知を知っていただこうと、シリーズ名を「野球と知と食べ歩き」にリニューアルいたしました。これからも楽しんでいただけるとうれしいです。

 

■お品書き

■楽天イーグルスが強かった理由を考えてみよう

ペナントレースと長い仕事が終わった途端、体が悲鳴 → 今は整体に通っているシンさんです。
今回は、去る11月2日に開催された「知のフリマ2013秋」で、私が担当したセッション「今シーズンの東北楽天ゴールデンイーグルスが強かった理由を考えてみよう」からお話します。

なぜ、楽天イーグルスは日本一になれたのか?

2005年の球団創設から8年、初のリーグ優勝と日本一を成し遂げた東北楽天ゴールデンイーグルス
パ・リーグでは北海道日本ハムファイターズびいきの私(地元が北海道)も、球界再編騒動から東日本大震災といった数々の試練を耐え抜き、「銀河系軍団」とも言える読売巨人軍を下して日本一に輝いた楽天イーグルスには感服しました。

ところで、シーズン開幕前「楽天日本一!」を予想した人は、どれだけいたでしょうか。大方の予想を覆した楽天イーグルス。なぜ、楽天イーグルスは日本一になれたのでしょうか?

日本一に導いた2つの要因

楽天イーグルスが日本一になれた理由、私はこの2つが大きな理由だと考えています。

baseball11_日本一に導いた2つの要因

ひとつめは『楽天優勝の立役者は、42歳の元外資金融マン』にあるように、2012年に新たに楽天球団社長に就任した立花陽三球団社長の考えと実行力です。巷では「星野監督がよかった」などと言われていますが、大きな要因ではありません。

※参考:『楽天優勝の立役者は、42歳の元外資金融マン』(東洋経済オンライン)
楽天優勝の立役者は、42歳の元外資金融マン  野球界に見る 凡才がトップに登り詰める方法  東洋経済オンライン  新世代リーダーのためのビジネスサイト

ふたつめは先発投手、特に田中投手の奮闘です。今回はこの点を詳しくお話します。

セイバーメトリクスでマー君を解き明かす

野球選手や野球そのものを統計学的数字で評価する「セイバーメトリクス」によると、今シーズンの田中投手は、QS(クオリティ・スタート)与四球率で優秀な成績を残しています。

baseball11_田中投手のすごさ

※参考:セイバーメトリクスは、前回の連載でも触れています。
野球脳のススメ〜セイバーメトリクスを紐解こう!:食べ歩きSEの「野球っぽいお仕事の話」(10)

QSが高い

QS(クオリティ・スタート)とは、投手自身の勝ち負けに関係なく、投球内容(投球回数と自責点)で評価する指標です。数値が大きければ大きいほど「大崩れしない」「よく働く」、すなわち「品質の高い投球ができる先発投手」です。

baseball11_QSとは

田中投手は、リリーフした試合を除くと、レギュラーシーズンで24回、CS(クライマックスシリーズ)と日本シリーズで3回、先発投手に立っています。このうち、QSが記録されなかった試合はたった1試合、残りすべての試合でQSを獲得しているんです(唯一QSを逃したのは、日本シリーズ6戦め、9回4失点160球完投負けの試合)。

与四球率がよい

一般的に四球が少ない投手は、ヒット・ホームラン以外でのランナーを許さない「効率よいピッチングができる投手」と評価されます。無駄なボールが少ないため、1球でも1回でも多く投げることができます。一試合100球という制限ができても、より長い回数、投げられる可能性があります。

baseball11_与四球率とは

今シーズンの田中投手は200回もの回数を投げているにも関わらず、ほとんど四球を与えていません。田中投手の与四球率1.36は日本の先発投手では一番の数字、「一試合あたり、四球を2個出すか出さないか」といった抜群のコントロールです。

田中投手といえば、うなる豪速球と決め球のスプリット(高速フォーク)で多くの三振を奪う!という力のイメージが強いと思いますが、データからは、力で押すだけではなく巧みなボールコントロールができる「無駄なボールを投げず、無駄な失点もせず、1イニングでも多く投げられるエースの中のエース」と解釈できます。
確かに速球もスプリットも、ズバズバとストライクが決まっていましたね。納得できます。

投球だけでは勝てない、援護率の重要性

さて、QSも与四球率も投球内容に対する指標であり、選手個人やチームの勝利数には関与しません。実際、QS率が70%を超える投手でも、負けが先行することもあります。たとえば阪神タイガーススタンリッジ投手は、QS率70%を超えたにも関わらず、8勝12敗と負け越しています(2013シーズン)。

投手が勝ち続けるためには、投球内容だけでは難しく、チームの打撃陣の健闘が不可欠です。田中投手が勝ち続けられたのも、楽天打線の健闘と切り離すことはできません。

baseball11_擁護率とは

田中投手登板試合の援護率は、6.08というとてつもない数字を残しています。田中投手が投げる試合で、打線は6点以上取っていることになります。ジョーンズマギーを獲得、銀次岡島が成長した楽天打線がどれだけ驚異的だったかが数字に出ていますね。
この強力な打線に援護されてマウンドに立つQS率90%オーバー(レギュラーシーズンだと100%)の田中投手が、次々に勝利を奪うのは当然の結果でしょう。

一方、パ・リーグの最多奪三振に輝き、セイバーメトリクスでも田中投手と遜色ない数字を残したオリックスのエース、金子千尋投手(15勝8敗、防御率2.01)。彼は、田中投手以上の奪三振率と遜色ないQS率を記録している割に勝ち星が伸びませんでした。
これは、援護率3.18の数字から「無失点に抑えたが勝ちなし」「1・2点に抑えたが打線が得点できない」ことが多かったための伸び悩みと言えるでしょう。野球のスラングで言うと「ムエンゴ(無援護、好投した投手を見殺しにすること)」が多かったための悲劇です。

野球のデータには言葉と同じ力がある

田中投手に絞ってお話しましたが、則本投手はじめ、他の楽天先発陣も似たような好成績(QS率・援護率の高さ)を残しています。

先発投手の仕事とは「試合をつくること」と言われます。「試合をつくる」とは、失点せずに長い投球回数(イニング)を投げ続け、味方が得点するまで待つことを意味します。
一方で「試合の勝利」は必ずしも先発投手の責任ではありません。先発投手が無四球、無得点で9回を投げ切っても、打撃陣が点を取らなければ勝ちようがないのです。

野球には、選手個人でどうにかなる数字(QS、与四球、奪三振など)と、どうにもならない数字(勝利、敗北、防御率など)とがあります。田中投手の24連勝も、彼の奮闘に対するご褒美であり、日本球界を去る前の大花火だと私は思っています。

試合観戦にかぎらず、スポーツ新聞やTV、ネットなどで野球のニュースを見るときは、「この数字は、選手自身の能力を表しているのだろうか」「この選手の成績が悪いのは、チームにも原因はないだろうか」という視点で考えると、今までとは違う「野球の知」のおもしろさに触れることができるのでオススメです。

セイバーメトリクスの生みの親、ビル・ジェイムズ氏は、著書『Baseball Abstract』で、次のような名言を残しています。

野球のデータには言葉と同じ力がある

好きな選手の人柄や外に見えない特性までもがあぶり出される、そんな野球のデータが私は好きでたまりません。

最後に
楽天イーグルス、パ・リーグ制覇、そして日本一おめでとうございます!
来年は日ハムが優勝しますから!

 

■今回の食べ歩き

浜魚(はまうお)

地元・西荻窪でよく行く魚料理メインの飲み屋さんです。JR西荻窪駅南口(駅コンビニ側)を出て右にすぐ、徒歩30秒で着きます(すばらしい立地!)

baseball11_浜魚の外観
JR西荻窪駅南口から徒歩30秒の「浜魚」

ぱっと見、初めての方には入りにくそうに感じるかもしれませんが、笑顔がステキな店主が迎えてくれるのでご安心を!こぢんまりとした「うなぎの寝床」みたいなお店なので、2人もしくは1人での来店をオススメします(3人はギリギリ、4人以上はキツそう)。

baseball11_メニュー
メニュー。イチオシは「得Set」1,500円!

メニューは日本海・金沢からの新鮮な魚介が中心です(日替わりです)。
今回は、2回に1回は注文している「得Set」を紹介!

baseball11_前菜
得Set 一品目、前菜

得Setは、料理3〜4品にドリンク1杯付きのその名の通りお得なセットメニューです。お値段は1,500円(たまに2,000円の日アリ、その日は結構豪勢になります)。一人飲みには最適なサイズですね!

ドリンクはビールが標準ですが、日本酒でもソフトドリンクでも選べます。ビール以外を選んだ場合は、Set価格がビールの差額分プラスマイナスになります。
この日(11/21)の前菜は、野菜メイン。里芋の煮付は、だしの効いたアッサリ味で絶品でした!

baseball11_刺身盛り
得Set 二品目、刺身盛り

得Setの二品目は、刺身盛り合わせ。店主がセレクトした「その日に食べて欲しい」魚介を、お手頃サイズで出してくれます。
この日(11/21)は写真左のカワハギに感動しました!キモとの組み合わせが絶妙!

baseball11_芝えび茄子黄にら胡麻炒め
得Set 三品目、芝えび茄子 黄にら胡麻炒め

三品目は焼き物 or 炒め物(日によって変わります)。
最近話題になった芝エビを、茄子や黄ニラと胡麻で炒めた料理が出てきました。エビのプリプリ感に茄子の味わい、胡麻の風味が絶品でした。

baseball11_小鍋
得Set 四品目、小鍋(煮物)

 ラスト、四品目はお吸い物 or 小鍋(同じく日替わり)。
この日(11/21)は、白身魚と牡蠣を野菜と一緒に炊いた小鍋でした。魚介のだしが引き立つ優しい味付けが最高!

浜魚のお酒は、日本酒とワインがメインでなかなかの品揃えです。言えば出てくる裏メニューもあります(焼酎好きにたまらないアレ!)お店で常連らしき人を観察してみるとわかりますよ。

これで得Setは終了。
私は、お酒を飲むとご飯が欲しくなるので、最後にご飯をいただきます。

baseball11_シラス飯
ご飯がほしいときはシラス飯

シンプルなシラス飯が好きなんです。普通は醤油をひとたらしするのですが、私は煮魚や煮物の煮汁をちょこっとかけるのが好きです。

以上でこの日の食事は終了。
気になるお会計ですが、得Set(ドリンクは裏メニュー)、シラス飯、泡盛水割りで合計2,650円でした。席料(チャージ)はありません。

常連さんともすぐ仲良くなれるお店なので、1人で来店しても楽しめます。少人数で飲みたいときは、ぜひ西荻窪まで足をお運びください!(&個人的にはステキな女子とデートしたい!)


これまでの食べ歩き

野球と知と食べ歩き(旧シリーズ名:食べ歩きSEの「野球っぽいお仕事の話」)コーナー

@shinyorke
書き手:中川 伸一


3 Comments

EM Zeroのナカノヒト (@em_staff) · 2013年12月17日 at 10:05

楽天イーグルスはなぜ日本一になれたのか?セイバーメトリクスで解き明かします! ―東北楽天ゴールデンイーグルスが強かった理由を考えてみよう:野球と知と食べ歩き(11) http://t.co/FxVljsaTKm (旧シリーズ名:食べ歩きSEの「野球っぽいお仕事の話」)

shinyorke (@shinyorke) · 2013年12月17日 at 10:10

なんやかんやで11回目!そして連載から一年!今回から、野球&ご飯の話にフォーカスを当て直し、仕事要素を薄くしました。 東北楽天ゴールデンイーグルスが強かった理由を考えてみよう:野球と知と食べ歩き(11) http://t.co/ecVOW0p7Vu

Seiji KATO (@fmnew7) · 2013年12月17日 at 11:19

RT @shinyorke: なんやかんやで11回目!そして連載から一年!今回から、野球&ご飯の話にフォーカスを当て直し、仕事要素を薄くしました。 東北楽天ゴールデンイーグルスが強かった理由を考えてみよう:野球と知と食べ歩き(11) http://t.co/ecVOW0p7Vu

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