2013年1月13日にご紹介した「大学でも使われるスクラム 〜PBLによるスクラム実践」。ソフトウェア技術者の育成を目的とした産学連携プロジェクトによるスクラム教育を、推進者の木崎 悟さんが報告します。

■次世代ソフトウェア技術者の育成

前回ご紹介した慶應義塾大学SFCにおけるPBL型科目「協創型ソフトウェア開発」の2012年度の結果を報告いたします。

PBLとは、具体的な課題のあるプロジェクトに取り組み、学生自身が問題解決を行うことでコンピテンシーの向上を図り、実社会における有用な人材を育成する教育手法です。私たちはソフトウェア開発プロセスにスクラムを採用し、大学と企業の産学連携プロジェクトを通じて、次世代ソフトウェア技術者の育成を行なっています。利用者のニーズを的確に捉え、未来の人々を豊かにするソフトウェアを設計・構築できるプロフェッショナルを育てることを目標にしています。

■活動の結果

2013年2月23日(土)、活動に参加した5チームがそれぞれのプロジェクトの結果を発表しました。

◎km3チーム

スマートフォンで自分がしたいこと(例えば、カラオケに行くなど)を、同じようにしたい友達を簡単に見つけるアプリ「寂しんぼ」を作成した。開発は、開発班とデザイナー班に分かれて分担して行った。

感想

  • もう一つの授業と合わせて、UML+スクラムをセットで実践できた(開発班)
  • インタフェースデザインの心理学についても自然と考えられるようになった(デザイナー班)
  • 単なるアプリのデザインだけでなく、チームのコミュニケーション方法やビジネスモデルまでを楽しみながら学ぶことができた(デザイナー班)

PBL_km3チーム_寂しんぼ
開発したアプリケーション「寂しんぼ」

◎HASTINチーム

FacebookでMANGAREBORNというサービスのFAN PAGEのLIKEを集めるテンプレアプリ(後でいじってもう1回別のアプリを出せるように)を作成した。各メンバがそれぞれの特性を生かした開発作業を行った。

成果物は、MANGAREBORNのFacebookページから見ることができます。

PBL_HASTINチーム_活動風景
活動風景(タイムボックス)

結果

海外ユーザからの「LIKE」数を増加することができた!(3万LIKE → 34万LIKE)このため、プロジェクトは大成功だった。

PBL_HASTINチーム_成果発表会
成果発表会

感想

  • 授業の進行は、スクラムの考えを取り入れることでスムーズに進んだ
  • アジャイル型の開発方法が身についた
  • 役割分担がうまくいった
  • 今回作ったFBアプリは、画像やテキストを差し替えて横展開できるので、企業に売りたい!

◎週末コーダーチーム

Android4.1に対応したアプリの作成(アニメ実況を目的としたTwitterクライアントとWebプラットフォームの実装)を行った。しかし、最後まで完成できなかった。また、収益モデルが不完全だったので、ユーザが求めている製品を作ることができなかった。学生たちは今後も開発を続ける意思を示しており、授業期間では難しかったが、今後の成果に期待したい。

◎FCハイメタチーム

ユニケージ開発手法(クライアントがUSP研究所のため)で生成したテキストデータを、iPadで見ることができる環境と、Jリーグの観客がスタジアムでさまざまなデータを見るのに利用するアプリを作成した。

製品の評価

今後もUSP研究所で利用するかという質問に、クラウドのデータをモバイルで見たいと言う需要はある。意外とB2Cでは存在しないかもしれないので、もっとビジネスになる可能性はある、と高評価を得た。

PBL_FCハイメタチーム_ミーティング
ミーティング@USP研究所

感想

  • デイリースクラムは他のグループワークに生かせそう
    デイリースクラムは、全員で管理し合うという認識だったが、うまくいかなかった
    デイリースクラムとスプリントバックログの重要さを学んだ
  • 1つのものを協力して作りきると言うこと自体は達成できた

◎気高くチーム

ウェブサイトで更新されていく記事を、スマホから検索・閲覧するためのアプリの作成。具体的には、クライアントの商品を使用した料理レシピ記事の検索・閲覧機能。

感想

  • 開発当初、手こずると思われた検索部分をきちんと作ることができてよかった
  • プロダクトオーナーの要件を満たしたアプリが作れて、とても満足

プロダクトオーナーからの評価

実際に使われることを想定した開発というだけではなく、教育を考えた上での配慮も必要で、主にコミュニケーション面で難しいところもありましたが、私自身、得るところは大きかったです。これまでは、ある程度仕様が固まってから本格的な制作に入る流れだったのを、早々にプロトタイプを作り、関係者、クライアントで定期的にレビューしながら詳細機能を作り込んでいく方法をとったところ、クライアント・制作者・ディレクターとも情報共有と進捗管理、信頼関係醸成という面で良い効果が出ています。

■今後の課題

今回の結果を踏まえて「情報システム教育コンテスト(ISECON2012)」にエントリーしました。一次審査を通過して、二次審査まで進みましたが、指摘をいただいた課題があるために入賞は叶いませんでした。スクラムは2012年度からの試みであり、今後発展させていきたいと考えております。

■今後の活動の予定

次年度の授業は、2013年9月に開始予定です。協創型ソフトウェア開発は、秋学期の科目のため、半年ペースで実施されています。
毎年、多くの企業や社会人の方に参加いただいております。スクラムマスターやプロダクトオーナー役として興味のある方はぜひご連絡ください。また、「知識創造理論に基づくソフト技術者PBL研究会」を発足し、アジャイル型PBL教育の普及に努めております。


これまでの大学でのスクラム

大学でも使われるスクラム 〜PBLによるスクラム実践コーナー

木崎さん書き手:木崎 悟

Web系プログラマの仕事をしながら、社会人向け大学院で専門職学位(情報システム学修士)を取得。現在、電気通信大学大学院情報システム学研究科博士後期課程在籍。専門はソフトウェア工学教育。フリーランス講師。
趣味はアニメ鑑賞。コミックマーケットに参加することが生きがい。

2 Replies to “大学でも使われるスクラム 〜PBLによるスクラム実践(2)

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