2010年09月4日に早稲田大学西早稲田キャンパスで「XP祭り2010~アジャイル学園祭」が開催されました。数あるイベントの中でも主催者、発表者、参加者の垣根が限りなく低いこのイベントの模様を、4名のレポーターの方に振り返っていただきました。
なお、本レポートEM ZERO Vol.6に掲載したものの完全版です。
m_pixyさんのレポート
「今日から始めるTOC-CCPM」(竹林崇さん)
TOC-CCPMのセッションのレポーターになったので、当日のセッションの簡単なまとめと感想をまとめます。なお、当日のスライドはWebで公開されています。
なぜプロジェクトが遅れるのか
まず、個々のタスクが80%の確率で終わるようにしてスケジュールを引いているのにプロジェクトが遅れる理由として次の3つが挙げられていました。
- パーキンソンの法則
- 学生症候群
- 遅れの伝播
パーキンソンの法則とは、与えられたスケジュールを使いきってしまうというもので、これが起こる理由の一つとして、「いったん早く終わったと報告してしまうと、次からの仕事の期限が厳しくなってしまう」恐れがあるからだと言われていました。学生症候群は余裕時間があればあるほど仕事の着手を遅らせてしまうことです。いわゆる「夏休みの宿題」のことですね。
TOC-CCPMのアプローチ
これらの理由によって多くのプロジェクトが遅延するという問題に対して、TOC-CCPMを導入してみようというお話でした。そのためにやることは次の3つです。
- ①マルチタスク禁止
- ②個から全
- ③正確な進捗把握
「①マルチタスク禁止」については、いわゆるスイッチングコストの問題かと思っていたのですが、ここでは「やっていることが見えない」ということを問題視されていました。つまり並行で複数のタスクを持っていると、完了していないタスクが多くなり、その進捗状況が見えなくなるということです。このことは、「③正確な進捗把握」でも同様の思想で進捗状況を「○○%」という形ではなく、「あと○日」という形で管理することで、90%で何日も止まってしまうというような状況を避けるということです。
「②個から全」は、CCPMのキモと言っていい(少なくとも僕はそう思っている)部分で、終わる確率が50%のところでスケジュールを引いて、バッファをすべてチームで管理する方法です。80%の確率だったものを50%の確率でいける見積りにすると、一般的には期間が半分になるそうです。その半分になった残りの時間を全体で集め、その集めたものを半分にして(終わる確率が50%なのでバッファは半分でよい)、チームで管理していくというやり方が紹介されていました。
竹林さんはここで、「遅れても怒らない」「早くできても次回以降の見積りを減らさない」という約束をすることが重要だと言われていました。またチームで成功基準を共有して、何のためのプロジェクトなのかを意識しながら仕事を進めることが重要だそうです。
TOC-CCPF
この他、CCPMの落とし穴などの話もあったのですが、僕が個人的に面白いと思ったのは、最後に紹介されたTOC-CCPFという考え方(というか、リーダーとしての行動規範のようなもの?)でした。その中からいくつか紹介したいと思います。
メンバーのモチベーションを高めるために、遅れそうになったときに「見積が甘い!」というのではなく、「難しい作業だったんだね、グッジョブ!」、予定より早く終わりそうなときにも、見積りについて責めるのではなく、「チャレンジしたんだよね、サンクス!」のような言葉をかける。
「問題はありませんか?」という質問は下策、「問題があるとすれば何ですか?」と声をかける。
など、面白い話がたくさんありました。
なぜチームで仕事をしているのか
最後に印象に残ったのは、「なぜチームで仕事をしているのか」という話です。個人としては多くても一生で40くらいのプロジェクトしか経験できない。複数のメンバーの経験を集めて広げることができるからチームで仕事をしているのだ。チームの多様性をいかに活かしていけるかを考えなければならない。というものでした。チームのことを真剣に考えてるいんだなあということがひしひしと伝わってくるセッションでした。